尊敬されるリーダー、恐がられるリーダー――影響力と社会的地位の2つの形(4)

なぜリーダーに従うのか?――フォロワーの心理

尊敬されるリーダー、恐がられるリーダーとは? 進化心理学・社会心理学の観点から社会的地位や影響力の実態に迫ります。連載の第4回(最終回)は、リーダーに従うフォロワーの心理について考察します。(編集部)

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Author_OhtsuboYohsuke大坪庸介(おおつぼ・ようすけ):神戸大学大学院人文学研究科准教授。主要著作・論文に 『進化と感情から解き明かす社会心理学』(有斐閣,2012年,共著),「仲直りの進化社会心理学――価値ある関係仮説とコストのかかる謝罪」(『社会心理学研究』30 (3), 191-212)。→webサイト

この連載では社会的地位の二重性として、力によって手に入れる地位と名声によって手に入れる地位について考えてきました。じつは今から500年以上も前に、この地位の二重性について気づき、どのように影響力をふるうのがよいのかを考えていた思想家がいます。それは、『君主論』の著者ニッコロ・マキアヴェリです(1)

『君主論』は、古今の実例を通してよい君主のあり方を論じた古典です。その中で、マキアヴェリは地位の二重性と関係の深い問いを投げかけます。「恐れられるのと愛されるのと、さてどちらがよいか」。第3回までの記事で私たちが見たところでは、愛されるリーダーの方がよさそうです。ところが、マキアヴェリの答えは、「どちらか一つを捨ててやっていくとすれば、愛されるより恐れられるほうが、はるかに安全である」でした。

このような見解に至ったマキアヴェリの人間観は、ヒトは利己的で合理的だというものです。しかし、利己的であるからこそ、恩恵を施してくれる限り、人々はその君主に従うはずです。逆に、恩恵を施せなくなれば人心は離れていきます。ですから、恩恵によって愛されるようなやり方では危なっかしいというわけです。

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今回のタイトルは「なぜリーダーに従うのか?」です。マキアヴェリにこの質問をしたら、リーダーに従うと得になるからだと答えたのではないでしょうか。それでは、現代の行動科学者たちはどのように答えるでしょうか?

従った方がよいから従う

進化心理学者のマイケル・プライスとマーク・ファン・フクトのフォロワーシップの理論は、マキアヴェリの考えに通じるところがあります(2)。彼らの理論について見る前に、フォロワーがなぜいるのかという問いが、なかなか深い問題なのだということから先に確認しておきましょう。

ヒトや動物の行動の中には、進化論ではすぐに説明できないように見えるものがあります。その代表は利他行動です。利他行動とは、自分の適応度を犠牲にして(自分の生存・繁殖に使えたはずのエネルギーや時間を使って)他者の適応度を上げることです。自然淘汰とは適応度の低い個体が排除され、適応度の高い個体が生き残るプロセスですから、利他行動をするものから淘汰されていなくなってしまうはずです。

ところが、そうならないのは利他行動が実際には互恵的な交換になっていたりするからです。たとえば、自分自身が元気で余裕があるときに困っている友人を助けてあげると、自分が病気や怪我などで困ったときにその友人が助けてくれるとします。すると、このような互恵的な関係をもっていた方がもっていないよりも生存に有利です。つまり、狩猟採集社会で病気の友人を助けるのに時間やエネルギーを使っているのは、現代人が保険にお金を使っているのと同じだというわけです。このように考えれば、利他行動がなぜあるのかについて理解できます。

利他行動についての進化論的な説明は他にもあります。ですが、ここで理解してほしいのは、利他行動は進化論的には不思議なものなので、じつはそれは互恵的な関係になっているのだとか、説明にひと手間かけなければならないということです。


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