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社会的葛藤の解決と社会科学における場の理論2

社会科学における場の理論

 

クルト・レヴィン著
猪股佐登留訳

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発行日: 2017年12月22日(予定)

体裁: A5判並製376頁

ISBN: 978-4-908736-07-0

予価: 4500円+税

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電子書籍あり(予定)

内容紹介

いま読んでおきたい古典的名著

社会科学において理論をどのように構築していくのか。レヴィンの概念的,方法論的考察の集成。心理学に多大な足跡を残したクルト・レヴィンの古典的名著が待望の復刊! 姉妹編として編まれた第1巻『社会的葛藤の解決』と同時刊行。

目次

第1章 心理学における定式化と進歩

第2章 場の理論における構成概念

第3章 一定時における場の定義

第4章 場の理論と学習

第5章 退行,後もどりおよび発達

第6章 場の理論と社会心理学における実験

第7章 社会心理学における研究法の問題

第8章 心理学的生態学

第9章 集団力学の開拓線

第10章 全体事態の関数としての行動と発達

付録 全体,分化および統一性の概念分析

著者

クルト・レヴィン(Kurt Lewin)

1890年ドイツに生まれる。ベルリン大学にて学位を取得し,ベルリン大学に勤める。その後アメリカに渡り,コーネル大学,アイオワ大学にて教鞭をとる。1945年にマサチュセッツ工科大学に招かれ,グループ・ダイナミックス研究センターを創設する。1947年没。ベルリン大学時代はゲシュタルト心理学派の有力メンバーとして活躍。渡米後は,パーソナリティ研究,そしてグループ・ダイナミックス研究へと関心を移し,多くの業績をあげる。

訳者

猪股佐登留(いのまた・さとる)

1925年生まれ。京都大学文学部卒,京都大学大学院特別研究生,滋賀大学教授を経て,島根大学教授。1997年逝去。主著に,『態度の心理学』(培風館,1982年),『教養心理学』(誠信書房,1983年,共編)など。

パブリッシャー注記

クルト・レヴィン(Kurt Lewin: 1890-1947)は間違いなく,心理学の歴史上最も創造性にあふれ,論争を呼んだ人物の1人であった。レヴィンが残した学術的な業績は,学習,発達,退行,達成動機,社会化,認知的不協和,グループ・ダイナミックス,そして実験室,学校,産業におけるグループ・ダイナミックスの応用といった広範な研究に,はっきりと残されている。

1948年に,クルト・レヴィンによる2巻本の論文集の1冊目『社会的葛藤の解決』(ゲルトルード・ヴァイス・レヴィン編)が,ハーパー・アンドー・ローから刊行された。2冊目の『社会科学における場の理論』(ドォウィン・カートライト編)は,1951年に刊行された。2巻ともレヴィンがアメリカに住んでいた15年間に著した論文を,読みやすいように編纂したものだった。その後,2巻とも品切となったが,1976年に『社会科学における場の理論』がシカゴ大学出版局からミッドウェイ再版シリーズの1冊として刊行された。その後,その再版も品切となってしまった。

クルト・レヴィンが現代の社会心理学に対して,どのように知的に貢献したのかを広く知ってもらうために,アメリカ心理学会はクルト・レヴィンの娘であるミリアン・レヴィン博士の協力を得て,2つの書目を1冊にまとめた形で再刊することにした。1冊として再刊することにしたのは,ドォウィン・カートライトが序で記しているように,この2つは統合的に関連したレヴィンの業績だからである。『社会的葛藤の解決』にまとめられているレヴィンの論文は,社会的葛藤の性質や原因への実践的な関心や,社会的葛藤の予防や解決法に関するレヴィンの調査など,応用心理学者としての業績が反映されている。一方,『社会科学における場の理論』においてレヴィンは,社会科学者として,個人や社会を理解するための概念的・方法論的ツールに関心を寄せている。

レヴィンのアイデアは,当時支配的であった単純な行動主義とは異なっており,物議をかもしつつも,新鮮なものだった。個人に対するレヴィンの心理学的な理論は1940年代以降それほど進展しなかった。というのも,レヴィンの関心が,場の理論の社会科学への応用,特に集団過程やアクション・リサーチに移ってしまったためである。これらの2巻を1冊にまとめることで,読者はレヴィンの思索を幅広く知ることができるだろう。現代の学生たちが,レヴィンの業績に新たに関心をもってくれることを,アメリカ心理学会は期待している。

ゲイリー・R. ファンデンボス,Ph. D.

パブリッシャー アメリカ心理学会

訳者まえがきより

生活体の示す行動は,生活体と環境との関数関係として表示しうるもので,クルト・レヴィンはこのような関数関係を明らかにしたものが心理学的法則であるとした。そして,生活体と環境とが相互連関している1つの場の構造を考え,これを生活空間と呼んだ。すなわち,それは一定時の行動を規定する条件の総体であり,個体的条件と環境条件とをともに含んでいる。

レヴィンは,観察事実と選ばれる概念との間に一義的関係を操作的に保ち,かつ観察事実に対応して条件発生的に見出された力学的概念(力,緊張など)に数学的構成概念(通路,方向,距離および位置など)を対位し,このような構成概念によって行動の場すなわち生活空間を表現しようとした。1つの構成体から他の構成体を論理的に導出してそれら相互の経験的関係を定め,構成体の概念的次元またはタイプを決定し,かつ観察事実と照合して構成体を測定し,観察事実の間の関数関係を定めるというのがレヴィンのやり方であるが,こうしたやり方は因果関係を分析し,科学的構成概念を樹立する場の理論的方法であった。レヴィンにあっては現在の行動に効果を及ぼしうるもののみがその場における実在であり,この書に集められた論文においてレヴィンは,理論的立場および概念の定式化の意義を確立し,情意の領域を出発点として人の構造,学習,発達,社会心理学の問題にいたるまで彼のいわゆる場の理論的見地からみごとに解明している。この書は彼のこうした論文10編をその門下カートライトが編集したものである。

ことにレヴィンは社会生活も1つの力動的全一体であり,このような全一体の構造的特性すなわちその構成部分の間の関係を強調し,構成要素の特性をつきとめるとともに,場そのものすなわち諸々の社会力の力動的「関係」を明らかにすべきことを主張した。ここで個人心理学における生活空間にあたるものは社会的場として定立された。レヴィンはこのような社会生活における各種の力の働き合う相互関係の研究により社会科学の統合を目指すのであった。

社会心理学では,社会成員の示す行動の顕型によらずに条件反応型に基づき法則が求められ,社会現象の説明は歴史的因果によらずに体系的因果に基づいてなされる。このようにして社会体の特性は成員相互の依存関係により規定され,このような社会的場全体の特性,その集団領域の分化度,集団領域の特性すなわち流動性や弾性,雰囲気,および境界の固さなどにトポロジー概念が対位され,その場でいかなる事象が可能か不可能かの静態から始まって,現実に一定の社会現象の生起する因果関係の究明すなわちベクトルの動態が扱われ,しかも特定の社会的場の差異相が検討された。

ところで社会的場の特性はその場の大きさよりもその型にいっそう根本的に関連する点から,この型の特性を移調すれば小集団でもその構造を究明しうるとして,最初にはこのような小集団を実験的に設けて考究が進められた。

また,生活空間の境界域にふれる物理的社会的事象は,心理学的要因と非心理学的要因の交差する問題として彼のいわゆる心理学的生態学の見地から分析され,食習慣のような例をとって経路説を例証し,社会的変化は経路の特定部分における力の布置を変化することにより招来されることを指摘した。

レヴィンの集団力学の取り扱いは,この方面の出発点とされており,これは積極的に民主的な集団活動を増進し,能率的に協同作業を実現するにはいかにすべきかを研究し,それに基づいて実践し,実践を反省して再度理論を推進しようとするものであるが,それは場の理論から当然要請される問題であった。

この書はレヴィンの概念体系の総仕上げともいうべく,レヴィン心理学の概論書と見てよかろう。このような意味でできるだけ広く日本の読者に伝えられるようにレヴィンのいうところを忠実に跡づけてみたのがこの訳書である。