尊敬されるリーダー、恐がられるリーダー――影響力と社会的地位の2つの形(4)

なぜリーダーに従うのか?――フォロワーの心理

進化心理学者のアンソニー・リトルらは、この予測を実験によって検証しようと考えました(4)。そして、支配傾向の高さが顔の特徴として現れることに着目しました。じつは男性的な顔をしている人ほど支配傾向が高いのです(5)。このことから、次のことが予測できます。有事には男性的な顔のリーダーが好まれ、平時には女性的な顔のリーダーが好まれる。

ところで、男性的な顔とはどのようなものでしょうか? 男性的な顔の特徴は大きなあご、ふとい眉、角ばった頬骨などにあります。反対に女性的な顔は、小さなあご、細い眉、大きくて円い目などに特徴づけられます。

リトルらは、顔画像加工用ソフトウェアを使って同じ人物(男性)の顔に男性的特徴や女性的特徴を足すことで、男性的な顔の候補者と女性的な顔の特徴をもつ候補者を作りました。漫画やアニメを例にとれば、男性的な顔としては『北斗の拳』のケンシロウや『ゴルゴ13』の主人公のような顔、女性的な特徴のある顔としては『タッチ』の上杉達也や『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジのような顔を想像してください(6)

実験では、男性的な写真と女性的な写真を組み合わせて、国の指導者を選ぶとしたらどちらに投票するかを参加者に尋ねました。さらに戦争中であればどうか、平和な時期であればどうかも尋ねました。

結果はリトルらの予測通りでした。特別な説明をせずに投票してもらうと、ほぼ半分ずつの参加者がそれぞれの写真に投票しました(男性的な写真に51%、女性的な写真に49%が投票しました)。ところが、有事であると言われると男性的な写真に投票する人が64%に増え、平時であると言われると男性的な写真に投票する人は40%に減りました。

リトルらの実験では、男性の顔に女性的な特徴を付け足していましたが、別の実験では、集団間の競争だと言われると男性をリーダーとして選び、集団内での協力が必要だと言われると女性をリーダーとして選びやすくなるという結果も得られています(7)。また、男性の顔でも女性の顔でも、男性的な特徴があると有事のリーダーとして選ばれやすく、女性的な特徴があると融和が必要な状況のリーダーとして選ばれやすいという結果も得られています(8)

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しかし、このような顔の特徴だけに基づく実験室での“選挙”の結果にどれくらい意味があるのでしょうか。じつは、リトルらは、別人の顔に実際の候補者の顔の特徴を足して、その顔写真だけをもとにして現実の国の選挙を実験室でやり直すという実験も行っています。候補者はもちろん有名ですが、別人の顔にその特徴を足しているだけなので、その写真を見てももとの候補者には気づかれないようになっていました。ですから、この実験室での選挙に実際の選挙結果が影響するとは考えられません。ところが、この実験室での選挙の結果は、現実の選挙の得票率をかなりよく予測していたのです(政策などの情報をまったく与えないのに、です!)(9)

これらの研究結果を総合すると、フォロワーは顔の特徴から候補者が好戦的であるかどうかを(意識するにせよしないにせよ)見極めていて、状況に応じて国のリーダーを選び分けるといえそうです。男性的顔と女性的顔が好まれる程度が社会情勢によって変わるというこの一連の実験結果には、ちょっと空恐ろしい気持ちにもさせられます。

マキアヴェリは正しかったのか?

今回は、なぜフォロワーはリーダーに従うのかという問題から出発し、フォロワーたちもリーダーに従うことで利益を得ているという考え方を紹介しました。リーダーは集団での活動をうまく調整し、リーダーなしでは達成できない成功に集団を導くことができるからこそ、フォロワーが進んで従ってくれるのです。

このような考え方は、フォロワーを能動的な行為者と見なします。したがって、フォロワーにもフォロワーの適応があり、状況ごとに誰に従うかを積極的に選んでいるのだという予測が導かれました。有事のフォロワーと、平時のフォロワーは異なるタイプのリーダーを好むのです。


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