事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(4)

虐待の発見と司法面接の今後

最後に,司法面接に至る前の段階を考えてみましょう。司法面接が行われるには,子どもの申し立てや虐待の疑いに関する情報提供,通告が必要です。読者の皆様は「児童虐待防止法」(児童虐待の防止等に関する法律)(3)をご覧になったことはおありでしょうか。

第1回でも触れましたが,同法第6条1「児童虐待に係る通告」には,「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は,速やかに,……市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」とあります。重要なことは「虐待を受けた児童」ではなく,「児童虐待を受けたと思われる児童」だということです。「疑い」「可能性」でよいのです。

虐待ではないかと感じられたとき,私たちは「いい加減な通告はできない」「確かめなければ」と,根堀葉掘り尋ねたり,日時・場所を特定しようとしたり,矛盾を追及したくなるかもしれません。しかし,そうすることで子どもの記憶は曖昧になってしまいます。「虐待かな」と感じられたら,「誰が」「どうした」(誰が特定できなくとも)の内容で十分です。あれこれ確認するのではなく,以下の内容を記録しておきましょう(疑いをもち通告する人をA,当該の児童をBとします)。

・Aは,何年何月何日,何時頃,どこで,どうして当該児童(B)が虐待を受けていると疑うことになったか

・Bが話したり,行動で示したこと(具体的発話や行動)

・Aが尋ねたこと,話したこと,行動(できるだけ質問,発話,行動は控えるのがよいのですが,あればその具体的内容)

スポンサードリンク

これらを,できるだけ正確に記録し,情報提供や通告するときに伝えましょう。

子どもが「言わないで」と打ち明けてきた場合は,通告してよいものか,迷われるかもしれません。また,「通告者がわかるのでは」「逆恨みされないか」と不安に思われるかもしれません。しかし,同法には「……守秘義務に関する法律の規定は,……通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない」とあります(第6条3)。また,通告を受けた者・機関は「……当該通告をした者を特定させるものを漏らしてはならない」ともあります(第7条)。子どもは未熟であるから未成年なのです。子どもが「言わないで」「平気」「だいじょうぶ」だと言っても,大人が判断しなければなりません。

さらに,第5条は「早期発見の義務」を謳っています。「……学校の教職員,児童福祉施設の職員,医師,保健師,弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は,児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し,児童虐待の早期発見に努めなければならない」。こういった方々はもとより,私たち誰もが子どもを見守る目を養うことができればと思います。

子どもへの暴力をなくすことは,今現在のみならず,将来の長きにわたってその精神的・身体的健康,社会的適応を助けることになります。個々人が,手を携えて子育てを支援していくことがますます必要になっていると思います。

→この連載をPDFで読みたいかたはこちら

文献・注

(1) 厚生労働省「児童相談所全国共通ダイヤルについて」

(2) 厚生労働省「子ども虐待対応の手引の改正について――子ども虐待対応の手引き(平成25年8月改正版)」

(3) 「児童虐待の防止等に関する法律」(e-gov)

関連書籍

子どもから適切に言葉を引き出すにはどうすればよいのか。理論的な背景から訓練の方法まで。


1 2 3
執筆: