18歳は大人か?子どもか?――心理学から現代の青年をとらえる(4)

少年法適用年齢を引き下げてよいか

18,19歳の青年が投票できることになりました。一方で,飲酒や喫煙は20歳からです。はたして18歳は大人なのでしょうか。それとも子どもなのでしょうか。大阪教育大学の白井利明教授が,青年心理学の観点からこの問題に迫ります。第4回は少年法の適用年齢について考えます。(編集部)

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Author_ShiraiToshiaki白井利明(しらい・としあき):大阪教育大学教育学部教授。主要著作・論文に,『社会への出かた――就職,学び,自分さがし』(新日本出版社,2014年),『やさしい青年心理学〔新版〕』(有斐閣,2012年,共著)など。

――少年法適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げることが検討されています。現行では,なぜ少年は成人と扱いが違うのでしょうか。

少年の場合は,犯罪ではなく,非行と呼んでいます。犯罪は法律からの違反行為ですが,非行は少年の個性と環境との関わりによる逸脱行為です。非行には社会倫理的な規範から逸脱する行状も含めているので,犯罪より範囲が広いのです。犯罪は法律によってあらかじめ規定されていますが,非行はそれができない(事案に応じて事後的に認定される)のは,同じ非行事実であっても意味が異なるからです。そのため,少年の行動は「翻訳」が必要になります(1)。その作業をするのが家庭裁判所です。少年法の適用を外すことは,家庭裁判所の関与を外すことです。「翻訳」なしに犯罪事実で一律に刑罰を課することになります。

――少年は発達途上にあるので十分な判断力が育っておらず,その後の育成の可能性があるため,成人とは違う扱いになる,と説明されると思っていました。

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確かに,そのように説明すれば,少年法の意義が明確になります(2)。子どもは自分の意思を十分には表明できない存在です。そのため,それを聴き届ける専門家が必要になります。それが家庭裁判所の役割の1つです。必要な場合には少年鑑別所で心理技官による鑑別が行われます。また,子どもは関係的存在であり,周囲の環境のあり方に大きく依存しています。ですから,非行を子ども個人の責任だけに帰するわけにはいきません。さらに,子どもは発達の可塑性が大きいと考えられています。そうした時期では更生を図った方が,成人の犯罪者になるままにしておくより,社会のコストが小さいと考えられます。そして,子どもは社会の未来を託す希望であると考えられています。子どもには最善の利益を与えたいものです。このように,少年は健全育成を期する方が社会の関心にも合うし,社会の利益も大きいと考えられます。

しかし,今日の発達心理学は,何歳になっても発達の可塑性があるという見方をしています(3)。大人になると発達が止まってしまうわけではありません。そこで,今回は,一般に言われる「発達途上だから」といった説明ではなく,「翻訳が必要だから」という説明をしてみました。


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