18歳は大人か?子どもか?――心理学から現代の青年をとらえる(3)

18歳選挙権と主権者教育

18,19歳の青年が投票できることになりました。一方で,飲酒や喫煙は20歳からです。はたして18歳は大人なのでしょうか。それとも子どもなのでしょうか。大阪教育大学の白井利明教授が,青年心理学の観点からこの問題に迫ります。第3回は選挙権と主権者教育を考えます。(編集部)

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Author_ShiraiToshiaki白井利明(しらい・としあき):大阪教育大学教育学部教授。主要著作・論文に,『社会への出かた――就職,学び,自分さがし』(新日本出版社,2014年),『やさしい青年心理学〔新版〕』(有斐閣,2012年,共著)など。

――2015年6月の公職選挙法改正により,選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ,2016年6月から施行されました。18歳選挙権をどう考えますか。

青年期は産業革命後に誕生した発達期です。それまでの若者期は身近な大人と同じになることが一人前であり,社会の体制に順応することが目指されました。それに対して,青年期は新しい社会の担い手として社会の革新を目指すことになりました(1)

青年の政治行動は,大人が考える常識と合わないものとして現れがちで(2),不服従や建物占拠,暴動などの破壊行動として危険視されがちでした。それに対して,18歳選挙権は,青年が社会に認められる方法で政治と関わる可能性を発展させるものです。

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――18歳に選挙権を与えて大丈夫でしょうか。

政治的認識の発達で考えると,高校3年生で成人と同じ構造のある政治的態度をもつようになることが示されています(3)。中学生から高校生までを追跡した縦断データでも,中学生は変化が大きく不安定ですが,高校生では安定し,個人にとって自己に適したさまざまな構造を示すようになります(4)

しかし,これは政治的認識の発達の完成ではなく,始まりにすぎません。さまざまな経験をしながら,発達していくことになります。彼らなりのやり方で挑戦することを見守りながら,政治と関わろうとする意欲を引き出していくことが長い目で見ると有益だと思います。若いときに政治に参加すると,大人になっても参加するという効果を期待できます(5)

――若い人たちは政治に関心がないのでしょうか。

20代の選挙の投票率で見ると,他の年齢層に比べて低くなっています。青年は社会に満足しているわけではないのですが,それが投票行動につながりません。その理由として,青年の政治不信が考えられます。青年の政治的無関心として問題視されがちですが,青年の政治不信を払拭できない政治の責任が大きいと思います。

青年心理学者の原田唯司(6)の研究に基づけば,青年が政治を変えることができるという政治的有効性感覚を高めると,政治不信を低められます。政治不信は政治の知識の量や正確さとは関係がありませんでした。NHKの世論調査によれば,近年は,若い人たちの世代で政治的有効性感覚が上昇に転じているとのことです(7)。SEALDs(シールズ:自由と民主主義のための学生緊急行動)などといった最近の青年運動もそうした流れに位置づくのかもしれません。


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