知覚的リアリティの科学(3)

リアリティを超えていく

未知の感覚リアリティ

他にもリアリティを超えたVRは次々続々と登場しています。例えば,食べ物がお腹を通って消化されていく感覚を体験させようとするシステムを電気通信大学の梶本裕之氏らは提案しています。

梶本裕之氏らによるViVi-Eat(7)

胃や腸などの内臓については普段はほとんど感覚がありません。それらがどこにあるか,どういう動きをしているかも意識することがほとんどできません。内臓感覚で明確に意識できるのはせいぜい痛みくらいです。それを逆にとり,ないはずの内臓感覚を触覚や聴覚で創り出し体験させるのがこのシステムです。まさに未知の感覚リアリティを創出しています。

また,刀で身体をばっさり切られる感覚や身体を貫かれる触覚を体験させるシステムをNTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊淳司氏らが開発しています。

渡邊淳司氏らによる身体貫通感(8)

他にも多数のシステムやコンテンツがありますが,特に触覚に関係したものが多く,面白い気がします。これは触覚がまさに身体に直結したものであり,リアリティを身近なもとして直感的に感じやすいからではないでしょうか。他の情報への案内として渡邊淳司氏が主宰するサイト「触感コンテンツ100選」を紹介しておきます。ここでは多くの未知のリアリティを体験することができます(9)

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おわりに

今回は,感じるリアリティと感じないリアリティについて再考し,バーチャルリアリティ(VR)の比較的新しい研究として注目されているリアリティを変え,リアリティを超える技術について紹介しました。VRは,現実をそっくりまねる研究からリアリティを創り出す研究へと進化したことで,無限の可能性・将来性を得たといえるでしょう。

(→続く:近日公開予定)

文献・注

(1) 道又爾・北崎充晃・大久保街亜・今井久登・山川恵子・黒沢学 (2011).『認知心理学――知のアーキテクチャを探る〔新版〕』有斐閣

(2) 下條信輔 (1995).『視覚の冒険――イリュージョンから認知科学へ』産業図書

(3) INRIA・Anatole Lécuyerによる疑似触覚のサイト
INRIA・Anatole Lécuyerによる動画

(4) 明治大学・渡邊恵太氏による疑似触覚のサイト

(5) Zampini, M., & Spence, C. (2004). The role of auditory cues in modulating the perceived crispness and staleness of potato chips. Journal of Sensory Studies, 19, 347-363.

(6) 稲見昌彦氏らによるChewing Jockey(YouTube)

(7) 梶本裕之氏らによるViVi-Eat(YouTube)

(8) 渡邊淳司氏らによる身体貫通感(YouTube)

(9) 渡邊淳司氏らによる触覚コンテンツの紹介サイト


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