事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(3)

世界の司法面接

子どもが事件や事故の被害者や目撃者になることがある。しかし,子どもから適切に話を聞くことは,とても難しいようだ。そうした際の聞き取りの技法として注目されている司法面接について,第一人者の仲真紀子・北海道大学教授が解説します。第3回は世界諸国が司法面接にどのように取り組んでいるかを見ていきます。(編集部)

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Author_NakaMakiko仲真紀子(なか・まきこ):北海道大学大学院文学研究科教授。主著に『子どもの司法面接――考え方・進め方とトレーニング』(有斐閣,2016年,編著),『法と倫理の心理学――心理学の知識を裁判に活かす 目撃証言,記憶の回復,子どもの証言』(培風館,2011年),『こころが育つ環境をつくる――発達心理学からの提言』(新曜社,2014年,共編)など。→Webサイト

第1回では事実確認の難しさ,第2回では具体的にどう司法面接を行うかについて紹介しました。第3回では,世界諸国でどのように司法面接が使われているかを紹介することにします。

司法面接の始まり

子どもへの聴取が重要だと認識されるようになった背景には,いくつかの流れがあります。

1つは子どもへの行き過ぎた面接,調査が,実際にはなかった出来事を子どもに語らせることになってしまった,というものです。例えば,1986~1987年に起きたイギリスのクリーブランド事件では,半年という短い期間に125人もの子どもが性的虐待を受けたとされ,家庭から保護されました。親は,自分たちは何もしていないのに子どもが連れ去られたと言います。第三者委員会が調査をしたところ,児童保護にあたっていたのは医師とソーシャルワーカーでしたが,その強い「熱意」が誘導・暗示的となり,子どもが誤った報告をしたのであろう,と判断されました。アメリカでも,1980~90年代,幼稚園や保育所で,職員が子どもに虐待したと疑われる事件が相次ぎました。そこでも子どもへの不適切な聞き取りが問題であったとされた事件があり,被疑者・被告人の人権という観点から,子どもから正確に聴取を行うことの必要性が意識されるようになりました。

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もう1つは,上の問題と表裏の関係になりますが,子どもへの配慮ということがあります。「真実を明らかにしたい」「子どもを守りたい」という強い思いにより,特定の仮説に基づく面接を繰り返せば,実際に被害にあった子どもはさらに傷つくことになります。実際に事件がなかったのであれば,子どもは偽りの記憶をつくり出し,それもまた子どもに苦痛を与えます。どちらにおいても正確な情報をできるだけ負担をかけることなく聴取することが重要です。

以下では,世界諸国での司法面接への取り組みを見ていきます。

イギリス

イギリス(イングランドとウエールズ)は,司法面接が法的なシステムに入った最初の国だといってもよいでしょう。1991年に刑事司法法が改正され,刑事事件における「特別措置」,例えば子どもの証人に尋問するときは「かつら」を使わない(イギリスの裁判では法曹がかつらをかぶります),ラウンドテーブルで行う,証言はビデオを通して別室で行う(ビデオリンク方式),などの配慮に加えて,子どもの証言をビデオ録画し,主尋問の代わりに用いることが可能になりました(反対尋問は受けなければなりません)。そして,録音録画するのであれば適切な方法が必要である,ということから司法面接の方法が開発され,用いられるようになりました。

最初のガイドラインはいまから四半世紀前,1992年に出されています。当時,対象年齢は通常は14歳未満,性的虐待の場合は16歳未満でした。しかし,その後の改正で対象年齢が引き上げられ,現在は大人でも障害があるなどで繰り返し面接を行うことが困難な場合,同様の措置が可能です。また,近年では,弁護士による反対尋問も録音録画で行われるケースもあるとのことです。主尋問の代わりに録画が再生されることはよくあるようで,ある警察官は,「たまたま法廷に行ったら,自分が実施した面接が再生されていた」と言っていました。


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