事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(2)

事実について報告を求める

子どもが事件や事故の被害者や目撃者になることがある。しかし,子どもから適切に話を聞くことは,とても難しいようだ。そうした際の聞き取りの技法として注目されている司法面接について,第一人者の仲真紀子・北海道大学教授が解説します。第2回は司法面接がどのようになされるのか,その流れを見ていきます。(編集部)

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Author_NakaMakiko仲真紀子(なか・まきこ):北海道大学大学院文学研究科教授。主著に『子どもの司法面接――考え方・進め方とトレーニング』(有斐閣,2016年,編著),『法と倫理の心理学――心理学の知識を裁判に活かす 目撃証言,記憶の回復,子どもの証言』(培風館,2011年),『こころが育つ環境をつくる――発達心理学からの提言』(新曜社,2014年,共編)など。→Webサイト

子どもが虐待の被害者,目撃者等となった「疑い」があるならば,何があったかを話してもらう必要がある。今回は,事実確認のための面接の流れについて述べることとする。

録音・録画

前回述べたように,司法面接は,原則として録音・録画する。

そのため,隣り合った2つの部屋を用意し,一方の部屋では面接者が子どもと1対1で面接を行う。また,隣の部屋では,バックスタッフ(後ろに控えている人)が面接室の様子をモニターする。虐待が疑われるようなケースでは,児童相談所の職員,警察官,検察官などがチームを組み,1人が面接者となり,残りはバックスタッフとなって面接を支援する,というようなことが行われる。面接者もバックスタッフも,どちらも重要な役割を担う。

自由報告

多くの誘導・暗示が面接者の言葉によって伝えられる。そのため,事件や事故について話してもらうときには,子どもに自発的に,自分の言葉で話してもらうことが重要である。このような自分の言葉による報告を「自由報告」または「フリー(自由な)ナラティブ(語り)」という。

「××に叩かれたの?」

「うん……」

ではなく,

「何があった?」

「叩かれた」

「そうか,誰に,叩かれた?」

「××……」

と,本人の言葉で言ってもらう必要がある。

上のような重要な事柄が語られたならば,「では,××に叩かれたときのことを,最初から最後まで,全部話して」と自由報告を求める。加害した(可能性のある人)や,加害が疑われる内容については,特に子ども本人の言葉が重要である。面接者が先まわりして言うことのないようにしなければならない。

オープン質問

オープン質問(開かれた質問)は,自由報告を引き出しやすいことが,多くの研究により確認されている。オープン質問とは,次のような質問をいう。

・誘いかけ:「何があったか,最初から最後まで,全部話してください。」

・時間分割:「(子どもが言ったことの)前には,何がありましたか?」「(子どもが言ったことの)あとには何がありましたか?」

・手がかり質問:「(子どもが言ったこと)を,もっと詳しく話してください。」

・それから質問:「(子どもが言ったことに関し)それからどうなりましたか?」「そのあとはどうなりましたか?」

ご覧のように,子どもが話したことを中心に,その前,その後を埋めてもらったり,子どもの言ったことをもっと詳しく話してもらったりする。


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