事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(1)

子どもが事件や事故の被害者や目撃者になることがある。しかし,子どもから適切に話を聞くことは,とても難しいようだ。そうした際の聞き取りの技法として注目されている司法面接について,第一人者の仲真紀子・北海道大学教授に紹介していただきます。(編集部)

はじめに

「シホウメンセツ」という言葉をお聞きになったことはあるだろうか。私は1990年台後半に「司法面接」に出会い,研究を進め,プロジェクトを立ち上げてトレーニング(研修)を行ってきた。日がな司法面接と向き合っているので,誰もが知っているように思えてくる。しかし,実は,「え,それなんですか?」と言われることも多いのである。

Author_NakaMakiko仲真紀子(なか・まきこ):北海道大学大学院文学研究科教授。主著に『子どもの司法面接――考え方・進め方とトレーニング』(有斐閣,2016年,編著),『法と倫理の心理学――心理学の知識を裁判に活かす 目撃証言,記憶の回復,子どもの証言』(培風館,2011年),『こころが育つ環境をつくる――発達心理学からの提言』(新曜社,2014年,共編)など。→Webサイト

このたび,『子どもへの司法面接――考え方・進め方とトレーニング』(1)という書籍を刊行した。ここでは数回にわたって,司法面接とは何か,司法面接の背景,司法面接の外国事情などについて紹介したいと思う。

司法面接とは何か

司法面接を説明するとき,私はいつもこのように言う。

「司法面接とは,事件や事故の被害者や目撃者となった可能性のある子どもから,その出来事や体験について,法的判断にも活かせるような精度の高い情報を,より多く,子どもの心理的負担をできるだけかけることなく,聴取する方法です。」

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長くなってしまったが,要は,

・被害者,目撃者となった疑いのある子どもを対象としている(近年は,大人も対象としている国もある)

・事件,事故等の出来事・体験の報告を得るための方法である

・証拠的価値の高い,精度の高い情報を得ることを目指す

・面接を受ける子ども(被面接者)の心理的負担を最小限にすることを目指す

ということになる。

目撃・被害の記憶

なぜ,このような方法が必要なのだろうか。

事件や事故に巻き込まれた人から話を聞くことは,たいへん難しい。

突発的な事件は一瞬であったり,マスクやサングラスで犯人の顔がよく見えなかったり,あるいは,被害者が怖くて目をつぶったりするかもしれない。犯人がナイフを持っていたら,そこだけに注意が向いて,他のことは覚えていられないということもある。何があったかを刻銘に記憶することは難しく,犯人を識別したり,詳細に説明したりすることも困難である。

家の中で行われている虐待のような出来事の話を聞くことは,また別の面で困難である。いつも殴ってくるのがお父さんであれば,人物の特定自体は難しくない。しかし,食器を片づけなかったと言っては殴り,帰りが遅かったと言っては叩き,テレビの音が大きいといっては蹴る……。このような生活の中では,いつ,どのようなときに,お父さんが何をしたのかを個別に記憶し,思い出して報告することは難しい。「お父さんは乱暴な人だ」「気に食わないとすぐに怒る」「叩いたり,蹴ったり,殴ったりする」ということは「知って」いても,どの場面で何をしたのかを詳細に,具体的に「思い出す」ことは難しい。


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