事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(2)

事実について報告を求める

5.本題に入る

準備ができたならば,「今日は何をお話に来ましたか」などのオープン質問により,報告を求める。この質問が抽象的で伝わりにくい場合は,「○○さんが,(例えば)学校の先生に,何かお話をしたと聞きました。何があったか話してください」などと,面接者側で把握している客観的情報を踏まえて,誘いかけを行う。

子どもは,もしかすると,すでに学校の先生に対し,「××に蹴飛ばされてアザができた」と話しており,面接者もそのことを知っているかもしれない。しかし,「××に蹴飛ばされてアザができたって聞いたけど,本当?」という質問では,「うん」しか出てこない。誘導されて「うん」と答えたのか,本当にあったことなのか,判別が難しい。

重要なことは,(もしもそれが実際にあったのであれば)本人に話してもらえるように,面接者は,どの情報をどこまで出すか,十分に吟味しておくことである。子どもが話し始めたら,オープン質問を用いて,できるだけたくさん話してもらう。

6.ブレイク

おおむね聴取できたならば,面接者は短い休み時間(ブレイクをとり),バックスタッフとさらに聴取すべき情報について確認する。

7.質問

面接室に戻ってきた面接者は,子どもがまだ報告していない事柄について,必要に応じてWH質問,クローズド質問を用いながら,話してもらう。が,その場合も,オープンに戻すように心がける。

WH質問:(「××が蹴った」がすでに出てきているとして)「××が蹴ったと言ったけれど,××は,どこで蹴った?」(子どもが「運動場」などと答えたならば,「運動場のどこか,もっと詳しく話して」などとさらなる情報を求める)

クローズド質問:「××は,何か言いましたか?」(子どもが「うん」と言えば,「何て言ったか教えてください」などとさらなる情報を求める)

8.クロージング

クロージングとは,面接を閉じる手続きである。面接者は子どもに感謝し,他に話しておきたいことや質問などを受け,終了する。

司法面接は,典型的には司法や福祉の場面において,事件や事故が疑われる場合に実施される。しかし,同様の手続きは,学校や施設等での事実確認(事件,事故,いじめ,校則違反,体罰等の疑い等々)にも用いることができる。録画はできなくても,録音があれば「言った」「言わない」の問題を回避できるかもしれない。また,録音ができなくても,面接者の背後に筆記役が座り,質問や応答をできるだけ正確に書き取ることで,二度,三度と面接を繰り返さなくてすむかもしれない。

次回は,世界の司法面接事情について紹介します。

→第3回に続く(近日掲載予定)

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