実験心理学の魅力(4)

関西学院大学の今田寛名誉教授に、ご自身の研究史を振り返っていただきながら、心理学における実験や実証的アプローチの魅力について伺います。連載の第4回(最終回)では、研究を通じた人間関係の広がり、そして最近刊行された、実証的なアプローチを大切にした入門書『ことわざと心理学』について伺いました。(編集部)

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人間関係の広がり

――わき上がる興味・関心によって研究を広げていきながら、全体としてまとまりのある理論的枠組みを作っていくことを意識されてきたのですね。教育者として「愛情、熱情、誠意」を大切にしてこられたということですが、今田先生の研究室からは多くの研究者の方が輩出されています。また、海外の研究者の方ともさまざまな交流がなされていたと伺っています。そうした、研究を通じた人のつながりはどのようにできていったのでしょうか。

Author_ImadaHiroshi今田寛(いまだ・ひろし):元関西学院大学学長,元広島女学院大学学長。現在,関西学院大学名誉教授。主要著作・論文に『ことわざと心理学――人の行動と心を科学する』(有斐閣,2015年),『心理科学のための39レッスン』(培風館,2004年),『学習の心理学』(培風館,1996年)など。

確かに私の研究室からは、かなりの者が研究者・教育者として全国の大学でよい働きをしています。その姿を見ると教師として無上の幸せを覚えます。しかしそれも、関西学院大学心理学研究室独特の研究・教育の良い伝統と、家族的な良い師弟関係の伝統が背景にあったからだと思います。その空気については『関西学院心理学研究室80年史』(1)をお読みいただければわかっていただけると思います。ハミル館という面白い構造の独立研究棟が与えられていたこともあり、研究生活というよりは、生活の中に研究があったという雰囲気の中からこの伝統は生まれたと思います。それといまとは違って、大学におおらかさ、よい意味での遊びがあったことも幸いしたと思います。もし私に何がしかの貢献があったとすれば、それは前回にも述べたように、自分のやっている研究が面白くて仕方がないという姿を、研究や教育の現場で示してきたことと、言葉が平易で論理が明解であったことが何がしかの影響を学生に与えたかもしれません。これは次に述べる、英語が私の思考パタンに与えた影響もあったかもしれません。つまり日本語よりも構造がしっかりしていて論理的な英語が、私のものの考え方に与えた影響の可能性のことです。

次に、海外の研究者との交流ということですが、確かに私は、昭和一桁生まれの世代の中では海外との交流が多かった方だと思います。その理由の1つは、私の家庭と関西学院中学部以来の教育のお陰で、英語的思考パタンとコミュニケーションのとり方(論の展開はアメリカ人とイギリス人ではかなり違うので「米語的」というべきかもしれません)に若いときからなじみが深かったことが挙げられるかもしれません。私たちの時代は、英語の論文を書く場合、「縦のものを横にする」という表現が示すように、まず日本語で書いたものを英語に直すということをしていた人が多かったと思うのですが、私は最初から英語の論文は英語で考えて書く習慣がありました。それは日本語による論の展開と英語による論の展開では、順序や構造ががかなり違うことにも理由があったと思います。いずれにしてもかなり若いときから、英語による論文を、発行部数の多いアメリカの専門誌に積極的に投稿してきたと思います。いまの若い研究者には当たり前のこのようなことを1970年代のはじめ頃から行っていたのは確かに先駆的だったと思います。そのようなこともあって、しだいに海外の研究者との交流が広まっていったのではないでしょうか。

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