実験心理学の魅力(4)

ここで海外と私の関係をまとめておきますと、1961年からフルブライト留学でアメリカのアイオワ大学に留学し、指導教授のK. W. スペンスのクラスで書いたペーパーがA++と高く評価されたことがきっかけで、「お前は、私のもとで学位をとって帰るべきだ」と半ば命令されてPh. D. を取得しました。若かったのですね、ずいぶん頑張りがききました。

そして1968年からは、今度はブリティッシュ・カウンシルの留学制度によってロンドンの精神医学研究所のH. J. アイゼンクのところに留学しました。アイゼンクのところでは彼のテニスのお相手もしました。

その後、1990年に京都で国際応用心理学会(2)が開催された折に開会式の司会をするという大役をいただいたことがきっかけで、国際心理学界の世界に関わりをもつようになり、1992年から3期12年間、国際心理科学連合(3)の理事を務め、世界各国の心理学者との交わりが始まりました。この国際心理科学連合というのは、4年に1度の国際心理学会を主催している組織です。

日本心理学会は2016年に横浜で、わが国では1972年についで2度目となる国際心理学会を主催します(4)。私はこれまでの関係から同会の国際顧問団の1人に名を連ねており、「あなたの国の心理学にとって国際化とは何か:5大陸の比較」というシンポジウムに引っ張り出されております。そのときにはもう82歳になっているので、私が国際的な心理学会に関わるのもこれが最後になるでしょう。1972年の東京での大会時には、駆け出しの若造として協力していた私ですが、あっという間に時間が経ちました。感慨深いものがあります。

実証的なアプローチを大切にした入門書『ことわざと心理学』

――次の世代の研究者を育てたり、海外の研究者の方と交流を深めたりできるのも研究活動の醍醐味ですね。2016年の国際心理学会でも日本の多くの研究者や学生が参加され、さまざまな出会いが生まれるのではないでしょうか。さて、長年にわたり、学習心理学や実験心理学の研究を続けてこられたわけですが、2015年に『ことわざと心理学』という少し「意外な」書籍を刊行されました。その経緯と、この本のコンセプトを教えていただけますか。

「意外な」本、『ことわざと心理学』(5)の出版についてのご質問ですが、私もこのような本を出版することになるとは思っておりませんでした。そこで出版に至るまでの経緯を少しお話しさせていただきます。

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私は長年勤めた関西学院大学を退職後、2004年から広島女学院大学の学長に迎えられました。関西学院と広島女学院はW. R. ランバスという同じアメリカの宣教師によって創設された学校ですので、関学時代と同じ教育理念で仕事ができるのでお引き受けしました。

そして2010年まで5年半勤めて西宮に戻ってきたところ、関西学院大学が大阪梅田キャンパスで社会人を対象に開講している、通称「梅田ゼミ」で講座を担当するように求められました。与えられたテーマは「人生を豊かにする心理学」。このテーマは基礎心理学の人間にとってはいささか重荷だったのですが、長年心理学をやっていながらノーと言うわけにもいかず、引き受けました。


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