内部告発と組織不正の心理(4)

――アメリカが一番フラットでしょうか。

オーストラリアやニュージーランドの方が,アメリカよりは権威勾配がありますね。アジアはあまりくわしくないですが,アメリカはかなりフラットでしょう。地域差もあって,とくに西海岸はフラットですね。

アメリカの人たちとプロジェクト・ミーティングに参加したときに,アメリカから部長と課長が来ていても両方がファーストネームで呼び合っているから,どちらが上司かわからないときがあります。課長の方がバンバンものを言っていて,名刺を見直したら「こっちの人が部長でなくて課長か」と思うこともある。日本の場合は,上司と部下で態度も違いますよね。

日本は権威主義も強いですが,一般論としては権威主義が安定的な社会運営にプラスに寄与してもいるのです。たとえば,この大学のいまの学長は私と同年齢で,長く友人だった人です。仲もよかったし,教授どうしだった間は互いにため口をきいてました。彼が学長になった瞬間に,私は,他の人が見ている前では必ず敬語を使い,「さん」づけにせず「学長」と呼ぶことにしました。私はこの大学の勤務は彼よりはるかに長く,それなりに敬意を受けていますが,その私が敬語で接するのをみんなが見ることによって,彼の学長としての機能が整備されていくわけです。こういうのが,権威主義的政治文化のある日本のひとつの組織の姿です。

アメリカではそんなことはなくて,片方だけ偉くなってもファーストネームで呼び合います。アメリカは手続きに依存することによって,文化に依存しないですんでいるわけです。日本は文化に依存しているから,手続きの面が甘い。権威主義的文化が行き過ぎるのを抑えるためには,手続きをちゃんとすることが必要です。

会議や議論の方法

以前,『会議を制する心理学』(2)という本を出したのですが,そこで岡本ルールというのを示しています。そこでは,物事を決めるときに,多数決を採用しないで,準全会一致を採用しなさいとしています。準全会一致というのは,統計的に検討した表を用いて,何人の会議の場合は何人以上の賛成で決める,ということにするわけです(表1)。参考にしたアメリカの陪審制では,陪審員が12人のときに12分の10が有罪を決める境界なんです。12分の10ということは,3人の人が合意して反対すれば拒否権が発動できるということです。そういう考え方です。危ないことは3分の2でも不十分で,準全会一致をとるべきだと。科学的な根拠にもとづいて統計学的に計算したもので,そういう手続きをしっかりとやっていくわけです。日本の場合は,会議で「反対がないものと見なす」ということがありますが,それではよくないわけです。

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学会でもアメリカ人はすごいです。普段から仲がいい研究者同士が,相手の発表を凌駕し合うような大激論をするのを見たことがあります。私は両方と仲がよかったからヒヤヒヤし,その会合の雰囲気も変になって,終わりました。そうしたら,その後で一緒にランチに行っているんですよ。私があんな目に遭ったら,死ぬまでご飯を一緒に食べないですよ。私もランチについていったら,2人は普通に読んだ論文の話をしたりして,何ということもなかった。これには驚きましたが,何度もそういうことがありました。

表1 準全会一致の基準(3)

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