「死」って何だろう?

日本心理学会公開シンポジウム「死について考える心理学」を聞いてきました

緩和ケアとは

次は,改田明子・二松学舎大学教授による「緩和ケア病棟にて」。

もともとご専門は認知心理学だったけれども,ご自身の家族の闘病を間近に見られ,緩和ケアについて関心を深められたとのこと。

がんを抱えながら生きていく「がんサバイバー」(1)がとても増えていると,統計資料などをもとに語られました。

緩和ケアとは何でしょうか? WHOが定義を出していますが,多様な側面の「QOLを改善するアプローチ」だということ。QOLというのは主観的なものでもあり,ロールモデルもないなか,「自分にとって大切なものは何か」を問われることでもあるようです。

お話で非常に興味深かったのは,以下の話。

終末期に近づけば近づくほど,医師に「治療」できることは限られていく。今後どうなるか,未来を予想することがだんだんできなくなって,不確実性が増していく。そうすると,医師と患者とは,「いつまで生きられるのだろうか」といった大きな問題ではなく,明日の検査をどうするか,用意するものは何か,といった小さく,管理できる問題を切り出して,それに対応することになるのだ,と。

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検査なり,「何か」をやっていれば,医療関係者や家族の安心感は増すけれども,そこでは「死」について語られることはない。死の問題に向き合い,墓をどこにするか,葬式をどうするか,といったことを率直に話し,決まっていくと,本人はとても安心するとのこと。

その後,医師や緩和ケアの看護師の言葉を引きながら,苦しみや希望について考えていきました。多くの医療関係者が悩み,苦しんでいる様子がわかりました。医療関係者にとって,治療をやめる,命をあきらめることは,自分の存在を脅かすことに感じられるのかもしれない。でも,延命治療をやめた後の「生」をどう生きるかということに対して,医療関係者が果たすことができる役割は大きいようにも感じました。

死をめぐるいくつかの問い

最後の講演は,小森康永・愛知県がんセンター中央病院医師による「ナラティブ・セラピー――死を前にした自己の構築」。

小森医師によれば,「ナラティブ・セラピー」は「話を聞く」ことではないと言います。そうではなく,「問いかける(ask)」ことが大切なのだと。

この講演で,小森医師は4つの問いかけをしています。

1つ目の問いかけは「言葉にすべきなのか?」。

気持ちや思いを言葉で表現できることがよいことだと思いがちです。でもはたして本当にそうなのか。例えば,ディグニティ・セラピー(2)を,本人がやりたいと思うとは限らない。言葉ではなく,塗り絵の形で残す人もいた,とのこと。


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