「死」って何だろう?

日本心理学会公開シンポジウム「死について考える心理学」を聞いてきました

心理学は「死」のことをどのようにとらえてきたのでしょうか。日本心理学会が開催した公開シンポジウムの内容を紹介します。

ありふれているはずなのに,見えづらいものでもある――「死」とはそういうものかもしれない。

「死について考える心理学」と題された公開シンポジウムが,2017年8月27日に東洋大学の白山キャンパスで開催されました(9月3日には京都女子大学でも開催されていました)。

死について考える心理学

心理学で「死」はどのように扱われてきたのでしょうか?

「死」は心理的に大きく揺さぶられる現象であり,発達心理,臨床心理,社会心理など,さまざまな領域からアプローチされてもいました。しかし,人間のことを扱う学問領域にもかからず,意外と「死」についての研究は多くないような印象をもっていました。

会場には老若男女300人近くの参加者が集まり,熱気に包まれていました。みなさんの関心の高さを感じました。

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会場の様子

冒頭,司会の箱田裕司・京都女子大学教授より,企画趣旨の説明。

自身のご経験を踏まえながら,死や人生をどう考えたのか,思想家や宗教家の言葉を引きながら,語られました。自分の人生を自然の一部としてとらえる,「どう生きたか」が「死に方」を規定するのかもしれない,などなど,死について多くの思想家が紹介されます。

私たちは死をどうとらえているか

最初の講演は,下島裕美・杏林大学准教授による「健常者による「死」の見積もり」。

まず,「死」の専門家は誰だろうか,と下島先生は問います。宗教家なのか,医療関係者なのか,臨床心理士,介護支援者? とはいえ,多くの死を見つめてきた人でも,死を直接経験した人はいません。

ラインテストというものを下島先生は紹介されていました。

一本の横線が引いてあり,そこに①誕生,②現在の始まり,③現在の終わり,④死を入れていく。さて,あなたならどこにどう入れていきますか?

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図1 ラインテスト

人によって,どこに何を入れるかは異なるようです。紹介されていたなかで興味深かったのは,現在の始まりと現在の終わりの間に,「死」を入れた高齢者のかたの例。死は日常にあるものだ,と。なるほど。

昨今,さまざまなエンディングノートがよく売れているそうです。思い出を書く欄が多く,過去の出来事を自分なりに再構成しているのかもしれないとのこと。

その他,五色カード法というものが紹介されていました。愛する人や場所などの5つの領域に関して,自分の大切にしているものをカードに書いておき,物語が進むにつれて,カードを捨てていかなければいけない。そして最後にはすべてのカードを捨てる。カードを「捨てる」わけですが,加齢や死への道程の中で,大切なものとの別れや,できないことが増えていく,ということを実感させるものなのかなと思いました。

五色カード法を試した人は,カードを捨てることがこんなにつらいとは,と驚くそうです。本人への影響も強いことから,実際に試すには専門家の立ち合いや配慮が必要とのこと。

その他,時間的展望やメタ認知の研究と関連づけて「死」について私たちがどのように理解しているのか,深めることができました。


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