社会心理学の学際性とは(2)

――断ることもけっこうあったわけですね。

木下:

うーん,その点は記憶が定かではありません。けれども,最初から無茶苦茶でどうしようもない形で持ってくる人はほとんどないです。ものを頼むときは誰でも頼む相手のことも考えますから,あまり失礼なものを持っていけないという心理が働いているのだと思います。多忙で時間がとれずお断りすることはあっても,難しそうだからお断りすることは原則としてありません。そしてたいていのことは何とかなるものです。

――学際研究だから生まれてくる知見というものがあるわけでしょうか。

木下:

どうかな。個人でやっていることとあまり変わらないですよ。ただ,1人の研究だと自己完結的に自問自答にとどまりがちですが,学際となると複数の人間がいますので,他人との討論という営みが必ず入ります。そこで触発されることは当然あります。いわゆる「集合知」ですね。それでいえば,複数の人でも同じ社会心理学者同士が議論するより,異分野の人と議論する方が意見の分散が多い分だけ刺激になる,という違いはあります。議論をしていると,自分の考えの乏しいところや間違っているところに気づいたりしますので,やはり異分野の方と議論をした方がいいと思います。

――社会心理学の少し専門が違う方と共同研究をする場合と,それほど違いがあるわけではないのですね。

木下:

いま話したように意見の分散が大きいか小さいかの違いはありますが,その点を除けばほとんど違わないですね。何度も言いますが,面白そうだなと思うかどうかですね。面白そうなものというと,誰もやっていないことが多いのでリスクはきわめて高いけれども,それは当たり前の話であって,恐れていては何もできないのでダメもとです。阪神タイガースを応援しているとだんだんそうなってきます(笑)。

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三浦:

どうせ負けるだろうと(笑)。阪神タイガースは半分冗談だと思いますが,社会心理学の中で心理学の教育を受けた者同士でやるのと他分野の方とやるのとで少し違うのは,ターミノロジーが違うということがあります。同じ言葉を全然別の意味で使っているという違いがあることはあるので,その肝心なところがずっとずれたままだとうまくいかないことがあるかなという気がします。例えば,「インタラクション」という言葉を私は人間の相互作用という意味で使っていたら,相手の人は感覚間のインタラクションのことだとずっと思って聞いていた,ということがありました。何となく話が成り立つんだけれど,あとで聞いてみたら全然違うことを考えていたということがあります。そういうときに,違っていて当たり前とか,むしろ面白い,そういう考え方もあるのか,みたいに思えるということは,学際的なことをする場合に大事かなと思います。

(→第3回に続く


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