社会心理学の学際性とは(2)

社会心理学をバックグラウンドにして他のさまざまな学問分野の研究者と共同して研究をされてきた木下冨雄京都大学名誉教授と日本社会心理学会第57回大会準備委員長・三浦麻子関西学院大学教授に,社会心理学の学際性に関してお話を伺いました。第2回は学際とは何か,そしてどのように学際研究を進めればよいのかについて話し合われました。(編集部)

連載第1回はこちら

Author_KinoshitaTomio木下冨雄(きのした・とみお):京都大学名誉教授。

Author_MiuraAsako三浦麻子(みうら・あさこ):関西学院大学教授。

所属学部での異分野との交流

三浦:

木下先生は教養部や総合人間学部におられましたが,そのことは何か関係しますか。私も人間科学部にいましたが,人間科学部や総合人間学部とかは意図してつくられた学際研究の場だと思います。そこにいろいろな人がいるというのは単なる心理学科とはずいぶん違うな,ということは思います。

木下:

それもあるかもしれませんね。教養部や総人のメンバーと一緒に組んで研究をした,ということは特にないですが,学問的な交流はよくありましたので,異分野の知識やカルチャーが自然に獲得されました。下地はそういうところにあったのかもしれません。

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その中で1つ印象に残っているのは,地球惑星科学関連学協会という大きな学会が総人で開催され,私も「地震予知は可能か」というシンポジウムに招待されたときのことです。

いまにして思えば,日本を代表する地震学者がたくさん出席しておられました。そこで発言を求められて私は「悪いけれども,地震の予知はいまの地震学の手法では難しいと思う」と言ってしまったのです。会場の中には激高する人もいましたし,拍手してくれる人もいました。

なぜできないと思うのかと問われて,僕は「地震学には基礎方程式がないから」と言いました。複雑な自然現象を予測する学問として気象学があります。この天気予報の精度が最近向上してきました。その理由は気象衛星を含めて大量の観測データが入手できるようになったことがありますが,それ以外に基礎方程式ができたことが大きいと思います。これは多元連立方程式の形で書かれていますが,大型コンピュータができて解けるようになりました。ところが地震学は観測データは大量に入手できるようになったけれど,肝心の基礎方程式がない。データの観測も必要だけれど,それを放り込む基礎方程式が必要なのではないか,というわけです。地震学の基礎方程式がきわめて難しいことは十分承知していますが,こんな生意気な素人議論ができるのも総人で地震学者を含めた同僚と日頃遊んでいた結果かもしれませんね。

学際とは

木下:

話をもとに戻しますが,学際とは何かについて少しおさらいしておきます。

この点についてはいろいろな言葉や考え方があって,よく使われるのは「インター・ディシプリナリー」という言葉です。しかしシェリフが言っていることですが,学問の総合化については諸学の寄せ集めの段階である「マルチ・ディシプリナリー」から,統合された「トランス・ディシプリナリー」に至る4つの発展段階があり,インター・ディシプリナリーはその2番目だとしています。「インター・ディシプナリー」=「学際学」ではないのです。


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