18歳は大人か?子どもか?――心理学から現代の青年をとらえる(3)

18歳選挙権と主権者教育

――SEALDsに代表される今日の青年運動はどう見ますか。例えば,70年安保での学生運動との違いや共通点はありますか。また,ヨーロッパの青年運動との比較ではどうですか。

青年心理学者の中川作一は,70年安保当時の青年の心理を分析し,個人が集団に埋没しており,それは民主主義や仲間への不信にもとづくと指摘していました(8)。それに対して,SEALDsなどは,学校や家庭など日々の生活で考えていることと政治をつなげ,自分の言葉で語ろうとしています(9)。個人が単位となっており,しかも仲間に開かれているように見えます。また,かつては「世代の断絶」といわれ,青年にとって大人は「敵」だったかもしれませんが,今日の青年は大人と共同の取り組みを重視しているように見えます。

そして,青年が選挙運動に取り組んでいることが印象的です。ヨーロッパでは大規模なデモを青年が主導することがありますが,選挙には結びついていないようです。環境問題や性的マイノリティといった特定の問題に限定されたシングルイッシュー型の政治行動であり,選挙といった多様な論点を含み込んだパッケージ型の政治行動とは異なるとのことです(10)

今後の課題としては,青年の行動が学校・職場・地域といった身近なところで多様な他者とつながって現状を変えていく運動になっていくのかどうかに注目したいと思います。

――高校の主権者教育をどう考えますか。

文部科学省は,高等学校等において,政治的知識を活用し,主体的な選択・判断を行い,他者と協働しながらさまざまな課題を解決していく資質や能力を育むとしています(11)。そして,生徒が自分の意見をもちながら,異なる意見や対立する意見を理解し,議論を交わすことを通して,自分の意見を批判的に吟味していくことが重要だとしています。

この方向性は妥当なものと思います。例えば,他者への関心や多様性への寛容さは,民主主義や権利の理解という点で本質的なものだと思います。また,大人の意見を押しつけるのではなく,青年の不器用な発言も受け止め,青年自身が自分の思考や感情に気づき,場面に応じてみずから方向づけることができるようにすることは発達の論理にかなっています(12)。人間同士の連帯の重要性と可能性に開かれながら,物事の本質をとらえることで展望を見出すことは,青年期の発達の特質です(13)


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