のぞいてみよう!ICP2016――世界と日本の心理学の未来に向けて(前編)
Posted by Chitose Press | On 2016年06月06日 | In サイナビ!, 連載そして,1972年には第20回大会が東京で開催されました。私はそのときはたまたまアメリカにいて参加できなかったのですが,非常に熱気がこもったものだったそうです。開催や運営に尽力された先生方は,「極東の島国にも立派な心理学が発展している」ことをアピールするために奮闘されました。それから45年以上を経て,日本で2回目のICPが開催されるのです。
ICPを日本で開催する意義
――ICPを日本で開催する意義はどのようなところにあるのでしょうか。
今回,このICP2016を日本で開催する意義の1つ目としては,日本から先端的な研究の成果を発信するという面があります。もはや,日本にも心理学を研究している人がいることを伝える,という段階ではありません。
もちろん,そうした先端的な研究をされている人は,それぞれの専門領域の国際学会で,同じ専門領域の研究者を前に何度も研究発表をし,議論する機会があります。日本で開催することの2つ目の意義は,すでに国際的な確固とした地位をもつ研究者と比較して,そうした研究条件には恵まれていない人たちが今後飛躍する機会になってほしいということです。心理学を必要としている現場で働き,研究している実践家の方で,国際的な学会にこれまであまり行ったことがない人にもぜひ来てもらいたいと思っています。
3つ目としては,アジアと世界との懸け橋になることです。2004年に中国でもICPが開催されていますが,アジアで開かれる3回目の大会として,やはり日本がアジアの心理学界に貢献できること,牽引できる部分は大きいと思います。
4つ目として,世界中から先端的な研究者が集まるわけですから,専門的に自分の研究に対するコメントを聞いて,自分の研究そのものを深める目的のためにももちろんよい機会です。それと同時に,心理学の中にもいろいろな領域があるわけなので,心理学の中における異種格闘技というか,多面的な見方ができるということが大きな意味で自分の研究を一段飛躍させる機会になると思います。他の領域において,どのような研究者がどういった研究をしているかを容易に把握することができ,いろいろな専門領域の研究者と議論ができるということです。大きな国際学会はメリットもデメリットも両方ありますが,これが大きな学会のもつ意義であり,メリットだと思います。
5つ目に,こうした大きい大会ですからアカデミックな側面だけではなく,いろいろなソーシャルイベントの企画もありますので,世界の研究者と友達になるチャンスが多いこともICPの意義の1つでしょう。