のぞいてみよう!ICP2016――世界と日本の心理学の未来に向けて(前編)

2016年の7月24~29日の6日間,パシフィコ横浜にて,第31回国際心理学会議(ICP2016)が開催されます。世界から多くの研究者が参加し,広範にわたるテーマが議論されるようです。ICP2016の組織委員会委員長を務められる帝京大学の繁桝算男教授に,その意義や期待についてお話を伺いました。(編集部)

Author_ShigemasuKazuo繁桝算男(しげます・かずお):帝京大学文学部教授。ICP2016組織委員会委員長。元日本心理学会理事長。主著に『ベイズ統計入門』(東京大学出版会,1985年),『意思決定の認知統計学』(朝倉書店,1995年),『後悔しない意思決定』(岩波書店,2007年)など。

ICPとは?

――7月に大きな国際学会が横浜で開催されるということですが,どういった大会なのでしょうか?

国際心理学会議,International Congress of Psychology(ICP)が,7月24日から29日までの6日間にわたって,パシフィコ横浜で開催されます。これは,国際心理科学連合(International Union of Psychological Sciences: IUPsyS)という世界各国を代表する心理学会の連合体と,ホストとして選ばれた開催国を代表する学会が共同で4年ごとに開催するもので,心理学では世界最大規模の国際会議です。今年の第31回大会は公益社団法人日本心理学会との共催という形で開催します。

ICPの第1回は1889年に,パリで開催され,エッフェル塔で懇親会がもたれました。参加者は120人ほどだったようですが,当時の錚々たる心理学者,例えば,W. ヴント,F. ゴールトン,W. ジェームス,ほかにはS. フロイト,A. ビネー,P. ジャネ,E. デュルケムなどが参加していました。

ジェームスの言葉が残っていて,「パリの会議はよかった。フランス人の会議運営は褒めても褒め足りない。心理学を熱心に探究している120人の研究者を目の前にすると,自分が1人で心理の探究をしているわけではないとあらためて感じる。長い間苦しんでいる著作Essays in psychologyの完成に向けて頑張ろうという気になる」という感想をもったそうです。

ちなみに,昨年は,第1回の開催以来125周年にあたり,同じく,パリのエッフェル塔にて,IUPsySとICP2016の共同開催で,記念式典が催されました。

1889年の第1回開催以来,1892年の第2回はロンドンで,1896年の第3回はミュンヘンで,と各国で開催してきました。もともとはイギリスやフランスなどヨーロッパの国々のエリート研究者の集まりのような面もありましたが,現在の会長サス・クーパー氏は,南アフリカ連邦の出身ですし,ICPが世界の心理学の中心であることが意識されています。


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