歴史的・社会的文脈の中で心理学をとらえる(1)

小塩:『心理学研究』と『教育心理学研究』は基本そうですよね。ただしあまりに質の低い論文に関しては、編集委員長や副編集委員長レベルの判断で行われることはあるかもしれません。

渡邊:小塩先生は見た覚えあるかな,むかし俺が編集委員長をやっていたときだけど「ドライな性格とウェットな性格」というのを気体と液体の物理的(?)な性質から理解しようという論文がきて,すごく面白かったからずいぶん苦労して掲載まで持っていったんだけど,今回の日本心理学会の発表なんか見ているとある意味似たようなのがあるんだよ,脳かなんかの研究で,物質のイメージみたいなものと個人差を結びつけてといったことが,もう少しまともにやられている。そういう意味ではその論文が載った5~6年前にはトンデモ研究と言われかねなかったようなものが,今は堂々とできるようになっているんだよね。

小塩:そうですね。

渡邊:今回、澤幸祐さんたちのシンポジウムでもあるけれど、動物と人間のコミュニケーションというネタだってさ、10年前にそんなこと言ったら、そんなもの研究できるわけがないだろうと言われたと思うけど、それができるようになった。日本のソフト分野の心理学なんて進化していないと言われがちだけど、すごく進歩している。10年前とほんとに若い人がやっていることは違うし。

そういうわけで、さっき言った心理学のマップの中に自分がどこにいるかを若い人にイメージしてもらうための古い話と、そのマップがいまどう広がっていて、どういうふうに解像度が上がっていったりしているのかという新しい話が1つの流れの中でできるといいかなと。小塩さんは新しいことをたくさん知っているから、パーソナリティ心理学の昔とか過去のことをいま現在の新しいものとつなぐテーマを設定して、俺は小塩さんからこんな新しい研究があるというのを教えてもらい、俺はそれが昔もあったじゃないかという話をしていくと、いくつかテーマを選んでできる。1つ大きなテーマとしては、「変わるもの変わらないもの」というのがすごく大きなテーマとしてある。

無意識、脳、倫理

渡邊:もっと小さなテーマとすれば、いまは無意識だよね。今回の日本心理学会で今日見ただけでも各分野1つずつぐらいある。無意識や非意識、あとIATみたいのだと潜在というのか。

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小塩:バナージ(9)も来ていましたよね。

渡邊:この前の『社会心理学研究』に自由意思のレビュー論文が出たよね。これは社会心理学のテーマなのね、自由意思の問題って。すごいよ、社会心理学って。いつの間にか自己って社会心理学のテーマになっているし。我々が院生の頃、社会的認知の研究がおおよそ行きわたったところで、社会的認知をやっていた人が次のテーマとして自己に入っていった。日本でも研究者が移っていった。

小塩:バウマイスター(10)の流れがありますね。その後、セルフ・レギュレーション(自己調整)ですね。

渡邊:中心にいるような人たちにはマップがあるのだろうと思う。バウマイスター先生には多分マップがあって、彼はどこかに向かって歩いているけど、それを追いかけている人たちにはその地図が見えていないと思う。今日も、とある心理学者と話していたんだけれど、潜在意識と言っている人たちはフロイト(11) の著作を読んでいるのかね、という話をしていて。もちろん読んでいる人もいると思うけれど。自分たちの研究の直接の祖先だとは思っていないと思うんだけど、俺なんかが見るとついにフロイトが科学的な心理学に戻ってくるぞ、というイメージで見えるんだよね。そこは小塩さんから見てどうですか。フロイトの見直しになるの、全然違うものなの。


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