内部告発と組織不正の心理(2)

――どうなると属人思考が高くなるのでしょうか。

学問的なことを現場におろして言うと,意見の貸し借りが起こるとダメです。

会議で自分が案件を出して,まわりがその案件を無理じゃないかと思っているときに,誰かが後押ししてくれて通ったとする。その人が別の案件を出したときに,恩があるから助けてあげよう,と考えてしまう。本当はそれではいけないわけです。どちらもプロとしての客観的な判断であるべきなんです。プロであれば,自分の友人の案件に反対して,会議が終わった後その足で一緒に昼飯を食べられなければいけないんですよ。日本はそういうことはあまりありませんが,外国ではよくあります。昼飯が食べられないにしても,「鶴の恩返し」みたいに,先月恩を売ってもらったから,今月返さなきゃというようなことがあれば,もう組織として坂を降り始めます。

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意見を戦わせるのは,科学的な態度でやればいいのです。貸し借り的に考えるというのは,意見の賛成・反対を私物化していることになるわけです。意見の私物化が起こるとダメですね。

ですので,行儀のよいところはダメですね。意見を戦わせずに,シャンシャンと終わるのがよい会議だと思っていて,ちょっと質問すると根にもつのではダメです。

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そういう組織風土だと,不正が起きやすくなります。反対すべきときに反対しないわけですから。

属人思考があると,会議以外にも,中元や歳暮を届けるとか,ゴルフに連れていく・連れていかない,二次会に行く・行かないといったことが仕事に直結してきます。

――先生はいろいろな組織の方と話す機会があると思いますが,組織風土はすぐにわかりますか。

わかります。経営者や現場の人と話すと,組織風土のよい会社と悪い会社とで明らかに差があります。昔,九州電力で起きたやらせメール問題の調査のために第三者委員会が招集され,私が委員のひとりだったのですが,そのとき,私が作成し,(株)ビジネスコンタルタントが実施している「企業ドック」を九州電力に受けさせたのです。その結果を結果どおりに客観的にマスコミに発表してマスコミなどから袋叩きにされたことがありますが,九州電力は私の企業ドックで組織風土が健全という結果でした。それは,アンケート調査のような手法で計算して組織風土が数値表現で出てくる客観的な手法なのですが,そのときも検査する前からいい数字が出るだろうなと予想していました。というのは,日ごろの職場を見ていても,九州電力の人は自分の上司への反対意見を臆さず口にします。そういう場面を何度も見ていました。ですから,少なくとも当時は,九電の組織風土はよかったです。その後,企業ドックを受けておられないので,現状がどうかということについては,データがありません。いま,電力会社は原子力発電ができないから経営が厳しく,経営が苦しいと,風土が悪くなってくる傾向が出てくるかもしれません。心配しています。


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