内部告発と組織不正の心理(2)

組織による不正が,内部告発により明らかになる事件があとを絶ちません。なぜ組織不正が生まれるのでしょうか。内部告発とはどのようなものなのでしょうか。社会心理学,社会技術がご専門の岡本浩一教授に話を伺いました。第2回は,どのようなものか組織風土で組織不正が起きやすいのかについてです。

連載第1回はこちら

Author_okamotokoichi岡本浩一(おかもと・こういち):東洋英和女学院大学人間科学部教授,社会技術研究所所長。社会学博士。主著に『会議を制する心理学』(中公新書ラクレ,2006年),『組織健全化のための社会心理学――違反・事故・不祥事を防ぐ社会技術』(新曜社,共著,2006年),『属人思考の心理学――組織風土改善の社会技術』(新曜社,共著,2006年)など。

内部申告への組織の取り組み

――組織や企業は,内部申告にどのように取り組んでいるのでしょうか。

大きいところでは,内部申告のための仕組みをつくっているところが多いです。弁護士事務所と提携していて,そこに連絡をとれるようにしているところもあります。内部申告を吸い上げる仕組みはある程度あるのですが,内部申告が出てから先のやり方が成熟していないように見えます。

――大きい組織でも1年に1件あるかどうかくらいというお話でした。

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2万人くらいの組織で,1年に1件あるかどうかですね。たとえば,食品業界はもともと問題が起こりやすいのです。材料が日が経つと悪くなるから,ある日に価格がゼロになります。買いたたく方は時間をかけながら買いたたくんです。きつい世界ですよ。倫理的にやりにくい構造があるわけです。鉄鉱石は時間が経っても鉄鉱石ですが,食品はそうはいかない。私がお相手をしている会社は非常に努力しておられて,ずいぶんよくなってきています。

一番いいのは,会議がきちんとしていて,会議でいろいろな問題が摘み取れて,内部申告のようなことに至らないことです。会議がちゃんと機能するためには,組織風土の管理が大事だということになります。

組織不正の起きやすい組織風土――属人思考

――組織風土のお話がありましたが,どういった組織で不正が生じやすいのでしょうか。

私の言葉で言うと,組織風土として属人思考が強いところです。属人思考は権威主義の1つです。ヒトラーが戦争を起こして,ユダヤ人を全員虐殺しようという無茶苦茶なことが起こったわけですが,あれが権威主義です。権威主義が日本の企業社会にある程度適応した形で生まれ変わったのが属人思考です。

属人というのは,例えば仙台に工場をつくる案件があったときに,「仙台立地案件」と呼べばいいところを,「岡本プロジェクト」と呼んだり,「岡本会議」と人の名前をつけたりすることです。誰が関わるかというのは,もちろん案件の属性の1つなのですが,人的な事柄のウエイトが思考や意思決定の中で不釣り合いに大きくなることを属人的というわけです。日本の企業を見た場合に,属人性をゼロにしたら企業はもたないわけで,ある程度属人的でないと仕事にならないのですが,あるレベルを超えて過剰な属人思考になると,急速にいろいろな問題が起こり始めます。適当なレベルとその過剰なレベルの幅がけっこう小さいのです。


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