ものの見方はパフォーマンスをどのように変えるのか?(4)

悲観的にとらえることで成功する防衛的悲観主義者

防衛的悲観主義とは,前にうまくいっているにもかかわらず,これから迎える状況に対して,最悪の事態を予想する認知的方略のことです。

たとえば,人前でプレゼンテーションを行わないといけない状況が迫っているときに,防衛的悲観主義者は,“本番で台詞を忘れて頭が真っ白になるのではないか”“自分の声が小さくて,聞き取れないのではないか”“聴衆が退屈して,途中で退室するのではないか”,はては“コンピュータがフリーズして,パワーポイントが使えなくなったらどうしよう”“壇上に置かれた水がこぼれて資料が読めなくなったらどうしよう”と次から次へと不安がおそってきます。

しかし,こうした思考は,ただの悲観的思考ではありません。悪いほう,悪いほうへ予想し,予想される最悪の事態を鮮明に思い浮かべることによって,対策を練ることができるのです。

先ほどのプレゼンテーションの例でいいますと,彼らは,何度も何度も練習を繰り返すでしょう。ときにはまわりにいる誰かを相手にし,来るべき質問を想定した回答例をつくるかもしれません。また,本番には自分の資料を2部用意し,コンピュータを2台用意する場合もあるでしょう。

これから起こる出来事を悪いほう,悪いほうに想像し,徹底的にその対処法を整えた防衛的悲観主義者は,本番を迎える頃にはその不安をコントロールし,そして立派なパフォーマンスを収めるのです。

このように,防衛的悲観主義者は“前にもうまくいったし,今度もうまくいく”とはけっして片づけません。何でも悪いほうへ予想するのですが,考えられる限りのネガティブな結果を具体的に想像することによって,おのずとやるべきことは見えてきます。悪い事態を予想することで不安になりますが,そうした不安を逆に利用し,モチベーションを高めているのです(“想定される失敗が起きないように,頑張ろう!”といった具合に)。

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やるべきことが定まった防衛的悲観主義の人には,もう迷いはありません。あとはただやるべきことに集中するだけのことです。その時には不安のこともすっかり忘れているでしょう。

そうして用意周到な準備ができた防衛的悲観主義の人は文字通り,「何が起きても大丈夫」という自信のもとで,積極的な態度で本番を迎えることができます。どんな事態が起きても,それに対処すべき青写真が頭の中にクリアに入っていますので,何も恐れることはありません。まさに不安に打ち勝った瞬間なのです。

悲観的思考をしないとパフォーマンスが低下する

ところで,防衛的悲観主義の人が,こうした悲観的思考をやめたらどうなるのでしょうか。たとえば,これから重要な場面(試験,面接,試合など)を迎える防衛的悲観主義の人に“クヨクヨするな。ポジティブに考えよう!きっとうまくいくよ”と勇気づけたとします。あるいは悲観的思考から離れさせるために,何か気晴らしをさせたとします。それでもこれまでと同じように,あるいはこれまで以上のパフォーマンスを成し遂げることができるのでしょうか。


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