ものの見方はパフォーマンスをどのように変えるのか?(3)

楽観性

特性としての楽観性

シャイアーとカーバーは,楽観性を一般的な結果期待という点で定義し,“ポジティブな結果(成功)を期待する傾向”としました。ここでは,楽観性を比較的安定した特性としてとらえているのが特徴です。

先ほどの非現実的楽観主義は,“将来,宝くじにあたる”,“将来,素敵な人と結婚する”など1つひとつの出来事が自分に起きるかどうかを尋ねるものでしたが,ここでの楽観性は,それらが将来のすべてのことに一般化して,将来に対してうまくいくだろうと考える傾向のことになります。

特性としての楽観性を測定する尺度は,日本でも開発されており(6),子どもの楽観性を測定する尺度も開発されています(7)。ここでは,子ども用楽観性尺度の項目を表1に記しておきます。

表1 子ども用楽観性尺度の項目(8)
大きくなったら,楽しいことやよいことがたくさんあると思う
これからさき,自分には良いことが起こると思う
将来,幸せになれると思う
何かする時は,うまくいくだろうと考える
自分の将来を楽しみにしている

説明スタイルとしての楽観性

セリグマンによると,われわれは自分自身に起こった出来事をどのように習慣的に説明するのかといった“説明スタイル”をもっているといいます。

たとえば,数学のテストで悪い点数をとったときに,自分の努力不足がその原因だと考える(“内的な”説明スタイルをとる)人もいれば,先生の教え方が悪かったのがその原因だと考える(“外的な”説明スタイルをとる)人もいます。

一度悪い成績をとっただけなのに,次も,またその次も悪い点数をとるだろうと考える(“永続的な”説明スタイルをとる)人もいれば,今回はたまたま悪かっただけだと考える(“一時的な”説明スタイルをとる)人もいます。

また,勉強という限られた領域で失敗したにもかかわらず,自分は何をやってもダメで,すべてにおいて失敗するだろうと考える(“普遍的な”説明スタイルをとる)人もいれば,勉強という領域と他の領域を分けて考える(“特殊的な”説明スタイルをとる)人もいます。

セリグマンによると,説明スタイルには楽観的なものと悲観的なものとがあるとされています。

楽観的な説明スタイルというのは,自分に起こった悪い出来事に対して,

  • 外的(自分以外にその原因を求める)
  • 一時的(その原因は一時的なもので,長くは続かないと考える)
  • 特殊的(その原因を特殊的な理由に求める)

といった説明スタイルをとるものです。

また,自分に起こった良い出来事に対して,

  • 内的(自分にその原因を求める)
  • 永続的(その原因がいつまでも続くと考える)
  • 普遍的(その原因を普遍的な理由に求める)

にとらえる説明スタイルのことです。そして,この楽観的な説明スタイルをとる人のことを,楽観主義者(オプティミスト)といいます。

一方,悲観的な説明スタイルというのは,失敗の原因を内的・永続的・普遍的にとらえ,自分に起こった良い出来事に対して,外的・一時的・特殊的にとらえる説明スタイルです。そして,この悲観的な説明スタイルをとる人のことを,悲観主義者(ペシミスト)といいます。

こうした説明スタイルは,経験によって学習され,出来事を楽観的に,あるいは悲観的に説明するスタイルを習得していくとされます。とくに,両親やその他の重要な大人のモデリング行動によって影響を受けると考えられています。


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