ものの見方はパフォーマンスをどのように変えるのか?(2)

優れた他者との比較

鍵を握る学業的自己概念

これまで述べてきましたように,自分よりも優れた他者と比較することには,ポジティブな影響とネガティブな影響の両者があります。どちらの影響が色濃く反映されるのかは,その人が形成している学業的自己概念(自信のようなもの。学業的自己概念については,前回の内容を参照)によって違ってくることがわかっています。

ある研究(7)によりますと,“自分は勉強ができる!”といった肯定的な学業的自己概念を形成している人が自分よりも優れた他者と比較した場合には,パフォーマンス(学業成績)の向上が見られますが,いくら自分よりも優れた他者と比較していても“自分は勉強ができない”といった否定的な学業的自己概念を形成している人は,パフォーマンスの向上が見られないことが示されています。

おそらく,学業的自己概念は,優れた他者と比較した際に喚起される感情(図1参照)を規定する要因であると考えられます。優れた他者と比較した際に,肯定的な学業的自己概念を形成している人は,意欲感情を喚起しやすく,否定的な学業的自己概念を形成している人は,卑下感情や憤慨感情を抱きやすいということでしょう。

自分よりも優れた他者と比較することでパフォーマンスを高めることができるのかどうかは,1つには学業的自己概念が鍵を握っているといえるでしょう。いくら優れた友人と比較をしていても,自分に自信がなければ,モチベーションやパフォーマンスにポジティブな影響は及ぼしません。そういう意味でも,好ましい学業的自己概念の形成が重要になってくるのです。

われわれは,たった1人で社会から孤立して生きているのではなく,さまざまな社会的相互作用の中で,有形無形な影響を受けています。優れた他者の存在によってやる気が出たり,逆に自分の不甲斐なさを思い知らされ,意気消沈に陥ったりします。前回と今回は,他者の存在が自身のパフォーマンスに及ぼす影響について見てきました。

次回は,自分の将来に対する見方がパフォーマンスをどのように変えるのかについて紹介することにします。

第3回に続く

文献・注

(1) Festinger, L. (1954). A theory of social comparison processes. Human Relations, 7, 117-140.

(2) Lockwood, P., & Kunda, Z. (1997). Superstars and me: Predicting the impact of role models on the self. Journal of Personality and Social Psychology, 73, 91-103.

(3) 外山美樹 (2006).「中学生の学業成績の向上に関する研究――比較他者の遂行と学業コンピテンスの影響」『教育心理学研究』54, 55-62.

(4) Collins, R. L. (1996). For better or worse: The impact of upward social comparison on self-evaluations. Psychological Bulletin, 119, 51-69.

(5) Monteil, J. M., & Huguet, P. (1999). Social context and cognitive performance: Towards a social psychology of cognition. Hove, East Sussex: Psychology Press.

(6) 外山美樹 (2009).「社会的比較が学業成績に影響を及ぼす因果プロセスの検討――感情と行動を媒介にして」『パーソナリティ研究』17, 168-181.

(7) (3)を参照。


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