事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(3)

世界の司法面接

他の国々

イギリスは政府が主導的に司法面接を進め,アメリカはNPOが主体となり司法面接を推進しています。他の国々はどうでしょうか。

(1)北欧の国々

北欧も虐待への対応が進んでいる地域です。例えばノルウェー,スウェーデンなどでは,イギリスと同様,警察官が司法面接を行っています。スウェーデンについては『知的障害・発達障害のある子どもの面接ハンドブック――犯罪・虐待被害が疑われる子どもから話を聴く技術』(明石書店)(1)をご覧ください。

(2)イスラエル

アメリカで司法面接の開発にあたった心理学者であるハーシュコヴィツがイスラエルに司法面接を導入し,1995年からは性的虐待に,1998年からは身体的虐待に司法面接が用いられています(現在では,性的な加害が疑われる被疑少年や,知的障害のある被疑者に対しても用いられています)。面接はトレーニングを受けた福祉省の職員が行っています。

(3)オセアニア

オーストラリア,ニュージーランド,香港などは,イギリスとのつながりも強く,イギリス型の司法面接が行われています。しかし,民間による支援もあり,かつて訪問したことのあるメルボルンの施設には,司法面接室のほか,カウンセリング室や医務室も設置されていました。

(4)アジア

台湾,韓国の国々でも司法面接は行われています。韓国では「ひまわり(サンフラワー)」というワンストップセンター,警察病院に付設されたワンストップセンターが各地にあり,被害児童,被害者への支援を行っています。司法面接もその一環として行われ,福祉と警察が実施しています。台湾でも近年,性的虐待防止法が通り,トレーニングを受けた専門家(警察,福祉)が司法面接を行うことになったと聞いています。

以上,私たちが調査を行ったり,訪問したり,トレーニングを受けたことのある機関の情報をまとめました。体制は年々変化しており,いまは昔の部分もあるかもしれません。いずれにしても,司法面接の実施体制はどこが一番,何が一番ということはないのだろうと思います。政府の後押しも民間の努力も重要であり,福祉と司法が協力し,医療関係者,教育関係者,心理臨床関係者なども巻き込んで,支援・実施体制をつくっていくことが必要だと思います。

次回は,それぞれの専門性がある人たちがどのように協力していけばよいか,考えてみたいと思います。

→第4回に続く(近日掲載予定)

文献・注

(1) セーデルボリ, A.他著(仲真紀子・山本恒雄監訳,リンデル佐藤良子訳) (2014).『知的障害・発達障害のある子どもの面接ハンドブック――犯罪・虐待被害が疑われる子どもから話を聴く技術』明石書店

関連書籍

子どもから適切に言葉を引き出すにはどうすればよいのか。理論的な背景から訓練の方法まで。


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