事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(3)

世界の司法面接

このようにイギリスの司法面接の歴史は長いのですが,面接がうまく行われていないこともあるようです。2014年に出されたガイドラインは,司法面接の手続きを忠実に守っていない面接もあるとし,スキルの習得はもとより面接の計画を重視すること,児童保護サービス(福祉)と警察の連携(ジョイント・インスペクション)を強化する必要性を指摘しています。

イギリスでは,司法面接は,「スイート」とよばれる面接施設で行います(スイートルームのスイート(suite)で,ひと続きの部屋のことを指します)。スイートは警察の建物の中にあるところもありますが,民家を借り切り,各部屋を控室,面接室,モニター室にしているところもあります。かつては,警察官とソーシャルワーカーが2人並んで面接を行っていましたが(ジョイント・インタビュー),現在は訓練を受けた警察官が面接者となり,ソーシャルワーカーや他の警察官がそれをモニターするようです。また,近年はまれではありますが,インターミディアリ(仲介者)をおくこともあります。インターミディアリは政府によりトレーニングを受けた専門家で,ちょうど通訳のように,面接者の言葉を子どもにわかるように伝え,面接を支援します(もちろん誘導・暗示のないように注意します)。

アメリカ

アメリカでは州ごとに法律が異なり,司法面接の方法も「○○州のガイドライン」のようにバリエーションがあります(とはいえ,一定の構造のもとでオープン質問を用い,自由報告を重視した聴取を行うという点は共通しています)。また,面接は警察や福祉機関が直接行うのではなく,NPOであるチャイルド・アドボカシー・センター(Child Advocacy Center: CAC)で行われることが多いようです。CACは日本語では「子どもアドボカシーセンター」「児童権利擁護センター」などと訳されます。

CACは,病院や自治体からの資金援助を受けて運営される,多機関連携型のワンストップセンターであり,一般的には,医師,臨床心理士,司法面接士,事務員などが常駐ないし臨時で仕事をし,裁判に付き添ったりするボランティアがいたり,地域とのつながりもあったりします。場所は,ビルの中にあるところもありますし(例えば,オレゴン州のケアズノースウエスト),一軒家を借り受けて(あるいは寄付を受けて)ワンストップセンターとして使用しているところもあります(ルイジアナ州のニューオリンズCAC,ミネソタ州のコーナーハウス,ユタ州の2箇所のチャイルド・ジャスティス・センター(Child Justice Center: CJC)など)。現在,全国に900ものCACがあるとのことで,アラバマ州にはCACの全国組織があります。

CACには,控室,面接室,モニター室のほか,医療的な検査ができる医務室やカウンセリング室もあります。子どもは,例えば警察に付き添われてCACを訪れ,全身的な身体検査を受けたのち(あるいは身体検査が後になることもあります),司法面接を受け,必要に応じてカウンセリングその他の機会も提供されます。面接は,トレーニングを受けた司法面接士が行い,警察官,検察官,ソーシャルワーカーはバックスタッフとして,これをモニターします。全員が集うことが難しい場合は,週に1回カンファレンスを行い,録画を視聴し,その後の対応を決めるということもあるようです。


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