事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(1)

加えて,父親は,次のように反論してくるかもしれない。

「いつも叩かれる,って言ったけど,いつもって『いつ』のことなんですか」

「お子さんは『いつも』って言いましたよ」(実は「いつも」という言葉を最初に出したのは大人の側である)

「昨日ですか,一昨日ですか,それとも1週間前のことですか」

「さあ,そこまでは……」

「私はね,仕事でこの10日間出張で出かけてたんだ。叩けるはずがないじゃないですか」

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「はあ……」

その結果,父親は「今度こんなことを言ってきたら,名誉毀損で訴えますからね」と息巻いて帰っていくかもしれない。そして家では,子どもに「先生に余計なこと言ったりしたら,もっとひどい目にあわせるからな」と脅しをかけるかもしれない。子どもは「もうこの話はできない」と沈黙の世界に入ってしまうかもしれない。

疑わしければ

司法面接では,子ども本人の言葉で,(「いつも」のことではなく)特定の出来事について,できるだけ正確に,できるだけ多く話してもらうことを目指す。そして,子どもの報告は,原則として録音録画する。子どもが繰り返し話さなくてもすむように,また,言葉も,トーン,間も,表情も,動作もすべて記録できるようにするためである。

なお,上述の架空の会話では,大人が「虐待があったことを確認しなければ」と考えてしまった。しかし,児童虐待防止法は「虐待の疑い」があれば通告するように指示している(「虐待があった」ではない)。

この法律は,「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は,速やかに,これを……市町村,都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」とし(児童虐待防止法,平成16年改正),守秘義務に関する法律の規定は,「通告をする義務の尊守を妨げるものと解釈してはならない」とある(児童虐待防止法6条)。さらに,「学校の教職員,児童福祉施設の職員,医師,保健師,弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は,……虐待の早期発見に努めなければならない」としている(同5条)。

子どもが「つらいことがある」と言ってきたならば「何かあった?」と尋ねる。子どもが「叩いた」と言えば「誰が?」と,一言だけ質問する。「家の人」というような言葉が出たならば,それ以上根堀葉掘り聞くことはせず,市町村の窓口や児童相談所に通告しよう。電話番号189にかけると,24時間児童相談所に連絡することができる。

次回は,通告を受けて行われる司法面接について取り上げます。

→第2回に続く(近日掲載予定)

文献・注

(1) 仲真紀子編 (2016).『子どもの司法面接――考え方・進め方とトレーニング』有斐閣


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