事件,事故のことを子どもからどう聴き取ればよいか?――子どもへの司法面接(1)

話を聞くことの難しさ

子どもが事故を目撃したかもしれない,虐待被害にあっているかもしれないとなれば,大人は事件を解決するために,あるいは子どもを守るために,あれこれ話を聞きたい衝動に駆られる。

学校で,子どもが「家にいるのがつらい」と言ってきたらどうだろうか。打ち明けられた大人(例えば,教師)は心配のあまり,矢継ぎ早に次のように尋ねてしまうかもしれない。

「どうしたの? 何がつらいの?」

「お家の人が何かした?」

「お父さん? お母さん?」

「もしかして,お父さんが叩いたりしたの?」

「いつもお父さんに叩かれるの?」

口の重い子どもが,最後の問いにためらいがちに「……うん」と言ったらどうだろうか。

大人は通告した方がよいのか迷い,別の大人(例えば,上司)に相談するかもしれない。

この大人も「被害が確実でないと通告できない」と考え,根掘り葉掘り質問をしてしまうかもしれない。

「なんで叩かれたの?」

「え? 何もしてないのに叩かれた?」

「そんなはずあるかなあ。お父さん,乱暴な人なの?」

「なんか,叩かれたって証拠になるようなものある? そうか,証拠って言ってもわからないよね……」

「じゃ,何で叩くの? 足? 手? 蹴ったりもするの?」

架空の会話であり,大げさに書いてはいるが,大人が心配のあまりあれこれ聞いてしまうということは,よくあることである。

こういった会話では,大人の発話の中に「お父さん」「叩く」「蹴る」「乱暴」「足」「手」「いつも」などの言葉が含まれている。子どもは自分の言葉では何も言っていないのに,いつの間にか「お父さんは乱暴な人で,子どもをいつも叩く。手や足で叩いたり,蹴ったりする」というようなストーリーができあがってしまうかもしれない。

「お父さん」と対峙できるか

話を聞いた大人は,子どもが身体的虐待にあっていると判断し,父親と対峙しようとするかもしれない。しかし,ことは容易には運ばない。

「お子さんが,お父さんにいつも叩かれたり,蹴られたりする,と言っています」

「え? 子どもがそういったという証拠でもあるの?」

「いや,ちゃんと録音してあるんですよ……」

とは言ったとしても(そして,実際録音されていたとしても),上記のやりとりでは「大人が誘導した」と批判されてしまうかもしれない。


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