SNS上で不特定他者に自分の情報を多く公開しやすいのはどのような人?
『パーソナリティ研究』内容紹介
Posted by Chitose Press | On 2016年06月09日 | In サイナビ!, パーソナリティ研究みなさん,どのようなSNSを使っていますでしょうか。情報交換,情報入手に便利なSNSですが,それぞれのSNSにどこまで自分の情報を公開するか,というのは頭を悩ませるところです。(編集部)
太幡直也:愛知学院大学総合政策学部准教授。
目的
近年,インターネット上で他者と交流する,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service,以下SNS)を利用する人が増えています。SNS上では,自分の情報の公開内容を自由に編集でき,また,公開範囲を自由に設定できます。そのため,公開の仕方によっては,見知らぬ人から望まない連絡を頻繁に受けるといったように,その人にとって望まない結果をもたらすこともあると考えられます。
そこで,SNS上で過度に自分の情報を公開しないようにするヒントを得るため,本研究では,SNS上で不特定他者に自分の情報を多く公開しやすいのはどのような人かを明らかにすることを目的としました。
着目したパーソナリティ
本研究では,3つのパーソナリティ(個人特性)に着目しました。1つ目は,情報プライバシー(自分の情報を他者に伝えるか否かを調整したいと思うこと)です。情報プライバシーが低い人ほど,自分の情報を多く公開しやすいと予測しました。2つ目は,人気希求(自分にとって重要な集団の人たちから人気を得たいと思うこと)です。人気希求が高い人ほど,自分の情報を多く公開しやすいと予測しました。3つ目は,犯罪被害リスク認知(自分が犯罪に遭うリスクがあると感じること)です。犯罪被害リスク認知が低い人ほど,自分の情報を多く公開しやすいと予測しました。
方法
2011年4月に,ウェブ調査を実施しました。調査時に日本で利用者が多いSNSの1つであったmixiの利用者を対象とし,1051名(男性468名,女性583名,平均年齢36.76歳)のデータを分析しました。
調査では,自分のmixiのサイトを参照しながら,mixiのプロフィール上でどのように自分の情報を公開しているかを,2つの側面から回答するように求めました。(1)プロフィール上の“名前”などの8項目について,公開範囲の設定に回答してもらいました。そして,公開範囲が“全体に公開”となっている情報の数を調べました。(2)自己紹介で自分を表現している程度に回答してもらいました。続いて,情報プライバシー,人気希求,犯罪被害リスク認知に関する項目に回答してもらいました。
主な結果
重回帰分析(原因を複数想定し,結果に対する影響力を調べる分析)によって,“全体に公開”となっている情報の数,自己紹介で自分を表現している程度に,情報プライバシー,人気希求,犯罪被害リスク認知などがどの程度影響しているかを調べました。
ここでは,予測通りの結果が得られた,情報プライバシー,人気希求に関する結果を紹介します。(1)属性情報(性別のような,自分の特徴を示す情報),識別情報(本名のような,自分を特定できる情報)にプライバシーを感じていない人ほど,“全体に公開”となっている情報の数が多く,また,自己紹介で自分を表現している程度が高くなっていました。(2)人気希求の高い人ほど,自己紹介で自分を表現している程度が高くなっていました。
今後の展望
本研究によって,SNS上で不特定他者に自分の情報を多く公開しやすいのはどのような人かを明らかにすることができました。今後は,SNSを利用するときには,自分の特徴や自分を特定できる情報の扱い方に気をつけることや,他者から注目を得るために自分の情報を公開し過ぎないことを働きかけることを通し,多くの人がSNSをより安全に利用できるように社会に提言していきたいと考えています。
論文
太幡直也・佐藤広英 (2016).「SNS上での自己情報公開を規定する心理的要因」『パーソナリティ研究』25(1), 26-34.