日本発達心理学会に参加しました

2016年4月29日から5月1日の3日間,北海道大学で開催された日本発達心理学会第27回大会に参加してきました。学会の様子をご紹介したいと思います。

北海道での開催

日本発達心理学会の大会は例年は3月末に開催されています。今年は北海道でということもあり天候に配慮されたとのことで,4月末に開催されました。ゴールデンウィークの最初の3連休ということもあり,すごく混んでいるのかと思いましたが,旅行されている家族の方がいる以外は通常と変わらない印象でした。

さて,大会テーマは「変化と多様性のなかの発達心理学」。プログラムに掲載されている大会委員長の言葉によれば,「変化と多様性のなかで,発達心理学のどのようなディシプリンは変わらず,どのような側面は変化・進化し,多領域との連携・融合が進んでいくのか。本大会が,こういった様相を見渡すことのできる,新たな出発点となればと願っております」とのことです。

以下,個人的に目にした・耳にしたものに限られますが,大会の様子を紹介してみます。学会って,こういう感じなのか,ということを感じてもらえればと思います。なお大会のサイトにプログラムが掲載されていますので,そのほかにどういった企画があったのかは,そちらをご覧ください。

初日(4月29日)

初日の4月29日は小雨が降り,気温は最高気温も一桁。やや肌寒く感じました。さすが北の国。

札幌駅から地下鉄の南北線で2駅の北18条駅から10分ほど歩くと,メイン会場の高等教育推進機構の建物に到着。前日入りしていたので,朝イチの企画に間に合う時間でした。受付を済ませて,さっそく会場へ。ポスター発表以外はすべてこの建物内だったので,それほど寒さを感じずに過ごすことができました。初日は大きく分けて,午前に1つと午後に2つ。それぞれ10ほどのシンポジウムや発表が進行していました。

初日の午前は,最初「子育て中の親における仕事と家庭の主体的調整――“母親”または“家族”イデオロギーを超えて」を聴講。仕事と家庭を両立されている人は多いと思いますが,その際にどういった調整がなされているのか,その調整はどういった価値観,意識などの信念に関係するのか,といったことが具体的に紹介されていました。その中で,以下の書籍が紹介されていました。

 

乳児の道徳性発達研究の最前線」も同時に開催されていて気になったので,途中からでしたが聴講しました。話題提供と指定討論の先生は1人ずつで,話題提供の先生の研究がくわしく紹介され,それをもとにフロアを交えて議論がなされていました。道徳性については,哲学や倫理学だけではなく,近年は「実証的」なアプローチからの研究が進んでいる印象です。特にここでは発達の視点からの研究が紹介されていました。

午後は「子どもの成育環境と発達――遺伝と環境の相互作用についての新しい視座」ということで,行動遺伝学,公衆衛生,社会学,発達・保育の観点から遺伝と環境の相互作用についての議論がされていました。遺伝も環境がどう作用し合うのか,ということは発達についての大きなテーマですが,公衆衛生(環境など),社会学(貧困研究など)の視点が入っているのが興味深く思いました。

途中抜けて,ポスター発表の会場に行きました。壁に大きなポスターが並び,関心のある方たちが立ち止まり,ポスター発表をされている方から説明を受けたり,議論をしたりされています。1つひとつは限られたスペースではありますが,非常にたくさんの最新の研究が披露されていて,若い方もベテランの研究者も入り乱れて,さまざまな知的な議論がなされていて,これぞ学会だなあという印象を受けました。


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