9784908736162cover

ワークシートで学ぶ問題解決療法

認知行動療法を実践的に活用したい人へ 実践のコツを教えます

平井啓・本岡寛子 著

発行日: 2020年3月20日

体裁: A5判並製144頁

ISBN: 978-4-908736-16-2

定価: 1800円+税

ネット書店で予約・購入する

電子書籍あり

内容紹介

ストレスなく,楽に生きるために

さまざまな不安やストレスを解消するために,医療現場や相談機関で活用されている問題解決療法。それぞれが抱える問題を解決するための5つのステップを,ワークシートを用いながら具体的に解説します。本人だけでなく,支援者や家族も活用できる実践のコツが詰まった1冊。

目次

1章 問題解決療法の基礎

2章 問題解決療法とは?

3章 「問題」とは?――問題の定義

4章 解決策とは?

5章 問題解決療法の5つのステップ

6章 問題解決の定式化――問題解決療法の全体像を理解する

7章 問題解決療法の難しさ

8章 問題解決療法の応用

著者

平井 啓(ひらい・けい)

1997年,大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程退学。大阪大学大学院人間科学研究科准教授。
主要著作に,『医療現場の行動経済学』(東洋経済新報社,2018年,共編),「問題解決療法とその応用―精神・心理的コンサルテーション・がんサバイバーの社会的価値創造へ」(『認知療法研究』10(2), 114-116, 2017年),「精神・心理的コンサルテーション活動の構造と機能」(『総合病院精神医学』28(4), 310-317, 2016年),Tailored message interventions versus typical messages for increasing participation in colorectal cancer screening among a non-adherent population: A randomized controlled trial.(BMC Public Health, 16, 431, 2016年,共著),Problem-solving therapy for psychological distress in Japanese early-stage breast cancer patients.(Japanese Journal of Clinical Oncology, 42(12), 1168-1174, 2012年,共著)など。

本岡寛子(もとおか・ひろこ)

2007年,関西学院大学大学院文学研究科博士課程後期課程心理学専攻修了。近畿大学総合社会学部准教授。
主要著作に,『働く人たちのメンタルヘルス対策と実務』(ナカニシヤ出版,2016年,共編),「問題解決療法プログラムによって形成された対人的問題解決における意識―大学生を対象とした「コミュニケーション心理学実習」における試み」(『近畿大学心理臨床・教育相談センター紀要』2, 15-24, 2017年,共著),『なるほど! 心理学面接法』(北大路書房,2018年,分担執筆)など。

はしがき

ストレス社会といわれる現代において,私たちは,ストレスを上手に処理しながら生活できているでしょうか。ストレスを抱えていることは自覚していても,誰かの手を借りたり,相談したりするまでもないと考えている人,今は忙しいので時間ができたらなんとかしようと考えている人,ほうっておけばいつか解消されると思っている人,が多いのではないでしょうか。

いくつか事例を見てみましょう。

◆Aさん:50歳代,女性,主婦

主婦として2人の子どもを育ててきたAさんは,公務員の夫,長女(会社員)と長男(大学生)の4人家族。長女の結婚が決まり,長男も実家から離れた大学に進学することになり,少し時間的ゆとりができるはずでした。実家の母親(80歳代)から,「お父さんの物忘れがひどくなっている」と毎日,相談の電話がかかってくるようになりました。両親と一緒に通院したり,経済的に工面しなければならないことが多くなり,頭を悩ますことが増えていきました。だんだん部屋の片づけや炊事が面倒になり,ぐったりソファで横になっている時間が長くなってきています。

◆Bさん:40歳代,男性,会社員

Bさんは,情報通信会社でシステムエンジニア(SE)として働いています。大きなプロジェクトのリーダーを任され,ぜひこのプロジェクトを成功させたいと考えていました。取引先からは納期を早めてほしいと依頼があり,会社から許される限り残業と休日出勤で仕事を進めています。しかし,最近,ちょっとしたことでイライラして部下や家族にあたってしまうようになりました。また,予定していた仕事さえも残ることが多くなり,仕事でもミスも増え,そんな自分に対しても情けないと思う気持ちを強めています。

◆Cさん:30歳代,女性,保育士

Cさんは,左胸に違和感があり,健康診断で初期の乳がんであることが判明し,数カ月休職しました。初期であったことから,手術と再発予防の化学療法を終了後,仕事に復帰しましたが,再発の不安がだんだん膨らんできて,睡眠を十分とることができなくなっています。治療前はオシャレをして買い物に行くことが好きでしたが,現在はまわりの目が気になり,身だしなみに気を遣う気力もなくなり,人に会うのもおっくうになって,1人で家ですごすことが多くなっています。

上記のような状態を自分では「ささいなこと」と感じていても,放置しておくと徐々に自分では処理しきれないほどの大きさになっていることが多く,最終的に「からだの健康」だけでなく,「こころの健康」を崩すことにもつながります。

したがって,いち早く生活を見直して,ストレスを減らすことができるような仕組みづくりを始めたほうがいいでしょう。ましてや病気を患っている状態や,病気治療後で心身の機能が低下している状態においては,これまでのやり方が通用しないわけですから,一から現在の体調に合った仕組みづくりをする必要があります。

本書は,「日々のストレスを自分でどうにか減らしたい」「もう一度,生活を見直したい」と思われている方,また,医療機関や相談機関,組織の支援者として,また家族として,「ストレスを抱えている人を支援したい」と考えている方にも,今日から活用していただける問題解決療法という方法を紹介します。問題解決療法は,「いつか」ではなく,「今日から」少しずつ取り組めることを見つけて対処し,早く上記のような状態から抜け出せるよう助けてくれるものです。

本書では,読み物としてだけでなく,実際にワークシート(125ページ,付録)を用いて,仕組みづくりができるようになっています。また,繰り返し使用していただけるようウェブサイトからワークシートをダウンロードしていただけますので,ご活用ください。

関連記事

関連記事をサイナビ!に掲載しました。
「Zoomで体験! 問題解決療法――新型コロナウイルスによる外出自粛の問題について」
「対談 問題解決療法――坂野雄二×平井啓」