Twitter上で友人や知人の情報を多く公開しやすいのはどのような人?

『パーソナリティ研究』内容紹介

TwitterをはじめとするSNSでは多くの情報がやりとりされています。Twitterでの情報公開に着目し,ネット上で友人や知人の情報を公開しやすい人はどのような人なのかを明らかにする研究がなされました。(編集部)

太幡直也:愛知学院大学総合政策学部准教授。

目的

近年,インターネット(以下,ネット)上における他者情報の不適切な扱い方が,社会的問題として注目されることが増えています。極端な例では,ネット上に別れた恋人や配偶者の画像や動画を了解なく公開する,「リベンジポルノ」があります。「リベンジポルノ」まではいかなくても,自分に関する情報や写真を,ネット上で他人に公開されてしまったという経験をした人は少なくないと思います。

ネット上で他者情報を公開し,その結果,情報を公開された者にネガティブな感情を生じさせるならば,プライバシー権(私生活上の情報をみだりに公開されない権利)の侵害にあたるため,ネット上での不適切な他者情報の公開を抑えることは社会的に求められている課題だと考えられます。しかし,心理学におけるこれまでの研究では,ネット上での他者情報の公開に着目した研究はほとんど行われていませんでした。

そこで,ネット上で他者情報を不適切に公開しないようにするヒントを得るため,本研究では,他者情報の公開が多く行われるネット上のツールとしてTwitterでの情報公開に着目し,Twitter上で友人や知人の情報を多く公開しやすいのはどのような人かを明らかにすることを目的としました。

着目したパーソナリティ

本研究では,プライバシー意識(自分や他者の「プライバシー」をどの程度意識し,行動するか)というパーソナリティ(個人特性)に主に着目しました。他者のプライバシーへの意識が低い人ほど,ネット上で他者情報を扱うときに他者のプライバシーに配慮しないため,ネット上で他者情報を公開しやすいと予測しました。また,返報性の原理に基づくと,他者の情報を公開すると自分の情報を公開されてしまうおそれがあることから,自己のプライバシーへの意識が高い人はネット上で他者情報の公開を控えると考えられます。そこで,自己のプライバシーへの意識が低い人ほど,ネット上で他者情報を公開しやすいと予測しました。加えて,SNS上で不特定他者に自分の情報を多く公開しやすい人の特徴を調べた研究で着目されていた,人気希求(自分にとって重要な集団の人たちから人気を得たいと思うこと)などにも着目しました(「SNS上で不特定他者に自分の情報を多く公開しやすいのはどのような人?」 を参照)。

方法

Twitterは若者に多く使われていることから,高校生,大学生を対象とし,2015年6月に,ウェブ調査を実施しました。Twitterでツイートやリツイートを定期的にしている,高校生416名(男性111名,女性305名,平均年齢16.83歳),大学生1238名(男性341名,女性897名,平均年齢20.04歳)のデータを分析しました。

調査では,友人,知人に関する20種類の情報について,最近1か月のうちに,ツイート,リツイートをしたことがあるか否かに回答してもらいました。続いて,プライバシー意識,人気希求などに関する項目に回答してもらいました。

主な結果

分析では,ツイート,リツイートをしたことがある情報数(他者情報公開数)と,情報プライバシー,人気希求,犯罪被害リスク認知との関連を調べました。また,この関連の仕方が高校生と大学生で違いが見られるかを,多母集団同時分析という手法で調べました。

ここでは,主な結果について説明します。予測通り,自己のプライバシーを意識せず,プライバシーを維持する行動をとりにくい人ほど,他者情報公開数が多くなっていました。一方,予測と反して,他者のプライバシーの意識しやすさ,他者のプライバシーを維持する行動のとりやすさは,他者情報公開数とはほとんど関連は見られませんでした。予測と反する結果が見られたのは,ネット上でのコミュニケーションでは他者に注意が向きにくくなるため,他者のプライバシーの意識しやすさなどの影響が弱くなったためである可能性が考えられます。また,人気希求が高い人ほど,他者情報公開数が多くなっていました。なお,これらの結果はすべて,高校生,大学生ともに見られたため,Twitter上で友人や知人の情報を多く公開しやすい人の特徴は,高校生と大学生で類似していると考えられます。

今後の展望

本研究によって,Twitter上で友人や知人の情報を多く公開しやすいのはどのような人かの一端を明らかにすることができました。本研究の結果を踏まえ,自己のプライバシー意識が低い人や,他者から人気を得たいという欲求が高い人は,ネット上で他者情報を不適切に公開しやすいことを念頭に置く必要があると考えられます。私たちは,この研究が,ネット上での不適切な他者情報の公開に関する社会的問題の解決の一助になることを願っています。

論文

太幡直也 (2019).「Twitter上での他者情報公開を規定する心理的要因―友人,知人に関する情報公開に着目して」『パーソナリティ研究』27(3).