ものの見方はパフォーマンスをどのように変えるのか?(2)
優れた他者との比較
Posted by Chitose Press | On 2017年05月01日 | In サイナビ!, 連載逆に,自分よりも劣った他者と意図的に比較する人は,自分がなにかしらの成長をしたいと思って比較をしているというよりは,傷ついた自尊心を守りたいとか,あるいは優越感を得たいといった消極的な理由で比較していることが多いため,モチベーションが高まることなく,よって,パフォーマンスは向上しないといわれています(ただし,傷ついた自尊心は守られることになります)(4)。
このように,意図的に自分よりも優れた他者と比較することには,比較する他者をしのごうとする向上性の圧力が作用したり,比較する他者の存在が自分を鼓舞し向上しようとするモチベーションを促進させたりするために,パフォーマンスに対してポジティブな影響が見られるといわれています。
優れた他者との比較がパフォーマンスにネガティブに働く場合とポジティブに働く場合
では,優れた他者と比較をすれば,誰でもパフォーマンスが向上するのでしょうか。答えは“no”です。人によっては,優れた他者と比較することによって,意気消沈に至りモチベーションが低下し,その結果,パフォーマンスが低下することも考えられます。
実際に,優れた友人との比較が,子どもの学業達成にネガティブな影響を与えることを見出した研究(5)も数少ないながらにあります。
このように,優れた他者との比較の影響は一様ではなく,モチベーションやパフォーマンスにネガティブに働くこともあるようです。優れた他者との比較は,適応的な結果と不適応的な結果の両方を備えもち,複雑な恩恵をもっているといえます。
では,どのような場合に,優れた他者との比較がパフォーマンスにポジティブに影響し,逆に,どのような場合に,優れた他者との比較がパフォーマンスにネガティブに影響するのでしょうか。
そのことを調べた研究(6)を紹介します。その研究によりますと,優れた友人との比較には,パフォーマンス(学業成績)の向上に結びつくプロセスと,逆にパフォーマンスの低下につながるプロセスの両者があることがわかりました(図1参照)。また,両者をつなぐプロセスには,比較に伴う感情と,その後に行われる行動が関わっていることがわかりました。
具体的には,自分よりも学業成績が優れた友人との比較を行った際に“もっと頑張ろう”とか“相手に負けたくない”といった意欲感情が喚起されると,学習活動に対する努力行動へとつながり,その結果,パフォーマンスの高さにつながるというプロセスが見られました。
一方,優れた友人と比較を行った結果,ネガティブな感情(“落ち込む”といった卑下感情,“相手がにくらしい”といった憤慨感情)が喚起されると,学習活動に対する回避行動が行われやすく,その結果,パフォーマンスの低さに導くというプロセスが確認されました。
このように,比較が行われる際に伴う感情とその後の行動によって,優れた友人との比較がパフォーマンスに対してポジティブな影響を及ぼすのか,それともネガティブな影響を及ぼすのかが異なっているようです。