基礎心理学ポータルサイトPsyPoの登場
Posted by Chitose Press | On 2016年04月04日 | In サイナビ!基礎心若手会について
既に述べましたように,PsyPoは基礎心若手会が運営するサイトです。ここでこの若手会について説明したいと思います。基礎心若手会は,日本基礎心理学会に所属する若手の研究・教育活動や交流の支援を目的に2013年12月に設立された組織です(1)。現在33~42歳の有志学会員12名で構成されています。
若手会の活動理念は,「若手の研究・教育を促進する活動に取り組み,基礎心理学分野全体の競争力の向上に貢献」することで(2),柔らかい言葉で言えば「若手の得になるようなことをやろう」ということになります。
若手会は年2回ミーティングを行っているのですが,議事録を確認するとポータルサイトのアイデアは2014年度の2回目のミーティングですでに提案されていたようです。若手会の基本姿勢は,基礎(実験)心理学の裾野を広げるためのアイデアを実行していくというものなのですが,進学を希望する大学院生が研究室選びの情報にアクセスしやすい環境としてポータルサイトをつくろうという提案が最初に若手会委員の四本裕子先生(東京大学)からあったと記憶しています。
若手会の活動の中で最も大きなものは2014年度から始まった日本基礎心理学会のサテライトオーラルセッションです。これは基礎心理学会員の中でも特に優秀な若手を8名選出して,それぞれ20分トークをしてもらい,最も優秀だった発表者をその年の「The Young Psychonomic Scientist of the Year」として表彰するというものです。
このセッションはそもそも応募資格の基準が高く(2年以内に国際誌か『基礎心理学研究』に査読付き論文を発表していなくてはなりません),その基準を超える応募者の中からさらに審査を経て発表者を選出するものですから,ファイナリストの8名に選ばれるだけでもかなりの難関です。当然ながら1つひとつのトークのレベルが高く,そのためか,一部の間では「基礎心理学者の天下一武道会」とも呼ばれたりしているそうです。本セッションは今年(2016年)も日本基礎心理学会第35回大会の前日10月28日に東京女子大学(西荻窪)で行います。過去2回の大会の水準が非常に高かったため尻込みする若手も多いという話も耳にしますが,今年もぜひたくさんの方にご応募いただければと思います(今年度の応募サイトは7月にオープンの予定です。参考までに,昨年度のセッションについてはこちらでご覧いただけます。)。なお聴講はどなたでも(日本基礎心理学会員でなくても)事前登録不要で可能ですので,ぜひたくさんの方にご来場いただければと思います。
今後の展開について
まずはとにかく登録の研究室数を増やしたいと個人的には考えています。PsyPoからたどれる研究室の数が多いほど,利用者にとっては価値があるでしょう。ですので,今回このような紹介記事を書く機会をいただけたことは大変ありがたく思います。この記事の公開によって登録研究室が増えることを期待しています。
またサイトの使い勝手についてはまだまだ向上の余地があるように個人的には思います。現在のところ,カテゴリをクリックすると表示される研究室へのリンクの並びは,クリックのたびにランダムに変わるように設定されています。こうすることで50音順で「あ」行に近い名前の研究室が常に上に表示されるとか登録が早い/新しい研究室ばかりがページ上部に表示されて目立つといった不公平が生じないようになっているのです(このあたりの工夫はいかにも心理学の実験デザインに慣れ親しんだ人たちの発想らしいと,内側の人間ながら思います)。しかしリンクの並びについては利用者の好みに合わせて変えられるようなオプションもあると良いかもしれないと考えます。例えばポスドクや院生を積極的に募集している研究室を上位に提示する仕組みがあったら,あるいは地域別にソートするような機能があると,より便利になるかもしれません。さらに,利用可能な機材など,より細かな設定で検索できるようになると,共同研究者選びに都合よいかもしれません。ただしこうしたタグを増やしていくと登録の際に記入する事項は増えますので,その手間がかかり過ぎないような旨い塩梅を見極めることが大事かとも思います。サイトの利便性やデザインについても,ぜひご意見お寄せいただけますと幸いです。
文献・注
(1) 和田有史 (2015).「「若手研究者特別委員会」の発足とその活動――第33回大会サテライトオーラルセッションを中心に」『基礎心理学研究』34, 173-175.
(2) 和田有史 (2016).「2015年度の「若手研究者特別委員会」の活動」『基礎心理学研究』35, 印刷中.