新刊ナビ!(2017年5月)

不定期更新の新刊ナビ! 2017年1,2月以降に刊行された書籍の中から気になったものを一言を添えて紹介します。モラル,社会関係資本,誤解,物語,食行動,モラハラ,心理学研究のための入門書,勉強本など盛りだくさん。(編集部)

これまでの新刊ナビ!はこちら

亀田 達也 著
岩波書店 (2017/3/23)

モラル,道徳,共感はヒト社会がうまく機能していくために欠かせない。ヒトはどのようにしてそれらの心理機構を手に入れ,働かせているのか。新しい実験社会科学の視点から人間の本性に迫る。

キャス サンスティーン 著, Cass R. Sunstein (原著), 伊達 尚美 訳
勁草書房 (2017/1/28)

デフォルト(初期設定)がどれほど私たちの「選択」に影響を与えているかを行動経済学の研究で明らかにしてきたキャスティーン。「選択しない」ということを「選択する」ことで,私たちの生活や社会はもっとうまくいくのではないか。

ロバート・D・パットナム 著, 柴内 康文 訳
創元社 (2017/3/27)

『孤独なボウリング』でアメリカ社会の社会関係資本の現状を喝破したパットナムが,アメリカ社会が抱える成功の機会格差の固定化の問題を実証的に解説。

非行少年を支えるためには,司法現場だけでは難しい。就労支援,医療,教育,社会福祉の諸機関といかに連携をとりながら,非行初年の支援を進める道筋を探る。

浜田寿美男 著
ミネルヴァ書房 (2017/2/25)

自白研究の第一人者がこれまでの事件や研究を振り返りながら,司法現場における「自白」の問題を解説する。

日々接しているメディア表現をどのように分析していけばよいのか。具体的な研究を紹介しながら,メディア表現の理解における規範を明らかにする。

三宮 真智子 著
ナカニシヤ出版 (2017/2/15)

誤解とはいったい何なのだろう,誤解はどうして生じるのだろう。メタ認知の専門家が,コミュニケーションの観点から誤解という現象を解きほどく。

千野帽子 著
筑摩書房 (2017/3/6)

私たちは,身のまわりで起きていることをそのまま認識しているわけではなく,自分にとって都合のよい「物語」のかたちで受け止めている。物語論(ナラトロジー)を手がかりに,さまざまな小説や言説を取り上げ,私たちがどのように物語を作っているのかを探っていく。

アバターとしてデジタル空間に入り,他者と交流する多数の自閉症者。自閉症の社会史をたどりながら,自閉症者から見た世界の様相に「仮想エスノグラフィー」で探究する。

ビー・ウィルソン 著, 堤 理華 訳
原書房 (2017/3/24)

生まれたときから,食べることは人間にとってもっとも重要な活動のひとつだ。子どもはどのように食べることを学ぶのか,食べることにまつわる問題行動はどうして生じてしまうのか。子どもの食に関心のある人は必見。

多くの人が経験している部活。部活は制度上,どのように位置づけられているのか?部活に関わる教師はどのような意識をもって,どのように関わっているのか。部活は本当に自主的なものなのか?部活がはらむさまざまな問題点を平易に解説していく。

言葉としてはある程度社会的に認知されてきているLGBTについて,コンパクトな形で平易に解説した入門書。本書の後に読むとよい読書案内も充実。

マリー=フランス・イルゴイエンヌ 著, 大和田 敢太 訳
白水社 (2017/2/14)

職場で大きな問題となるモラル・ハラスメント。モラル・ハラスメントとはどのような現象なのか。どのように対処すればよいのだろうか。ハラスメント研究で著名な精神科医,精神分析医がコンパクトに紹介する。

テレサ・アマビール 著, スティーブン・クレイマー 著, 中竹竜二 監修, 樋口武志 訳
英治出版 (2017/1/24)

認識,感情,モチベーションの3つのインナーワークライフが,日々の働き方に驚くほど大きな影響を与えている! 進捗を丁寧に支援することこそが,マネジャーの最も大切な仕事だと説く。

パフォーマンスとはいったい何なのか。12の視点からパフォーマンスを考える。『モティベーションをまなぶ12の理論』の姉妹編。

三浦 麻子 著
北大路書房 (2017/5/10)

心や行動をどのように研究し,分析すればよいのか。近年注目を集めている倫理的な観点を厚く記述しながら,心理学を学ぶ人にとって重要な論点を丁寧に解説。心理学研究をより面白く体験するために必要なベーシックな知識と考え方が身につくテキスト。

日本心理学会 監修, サトウ タツヤ 編, 鈴木 直人 編
有斐閣 (2017/4/20)

心をどのように調べればよいのだろう?認定心理士(心理調査)資格カリキュラムに対応したテキスト。心理調査で用いられるさまざまな手法をコンパクトに紹介。

中室牧子 著, 津川友介 著
ダイヤモンド社 (2017/2/17)

「○○が原因となって××という結果となった」という言説が満ち溢れているが,それはどれほど確からしいのか。因果推論の危うさと勘所をコンパクトに解説。

千葉 雅也 著
文藝春秋 (2017/4/11)

勉強をするとどうなるのか,なぜ勉強をするのか? 気鋭の哲学者がフランス現代思想の視点を組み込みながら,勉強を哲学する。

人文系学問への風当たりの強い昨今,大学で哲学することはどういうことか。大学の置かれている現状を明らかにしながら,哲学の秘める力を示す。