18歳は大人か?子どもか?――心理学から現代の青年をとらえる(2)

大人へのなりかた

しかし,重要なことは,若い人たちは特に,就職や結婚,出産の有無が大人の基準であるとは考えていないということです(3)。これまでは,大人になるとは,特定の社会的役割になりきることで,それができなければ未熟ということでした。

英語では,かつて「大人」は “manhood”または“womanhood”といい,夫や妻,父親,母親などの成人役割から離れては考えられませんでした。英語の“adulthood”(成人期)がオックスフォード英語辞典に最初に出てきたのは1870年です(4)。神が決めた役割と義務を越えて,自分で自分の人生を選ぶことのできる自律(autonomy)と自由,責任をもてるようになったのです。

いまでは,大人になるとは,必ずしも社会的役割を取得し,その役割に自分を同一化させることではありません。人間として自立することです。自立とは,自分で考え,決定し,責任をとることです。また,他人を思いやる心をもつことです。

――今日の日本の若い人たちは,フリーターやニート,パラサイト・シングル,ひきこもりなど,さまざまな問題が指摘されてきました。これらの問題の原因は何であり,どうしたら解決すると考えますか。

これらの問題は,それぞれ個別に論ずべきものがありますが,ここでは大人へのなりかたという点で考えます。

先ほど,今日では,大人になるとは,旧来の社会の役割への同一化ではなく,個人が心理的に自立することだと述べました。しかし,それはあくまでも可能性であって,現実は違います。

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例えば,社会は男女平等の方向に進んでいますが,現実の社会には性別分業が残っており,しかもそれが前提で社会が動いています。働きかたについても,大きくは労働時間の短縮に向かっており,かつての「仕事も家庭も」という願いから,さらに「仕事も家庭も趣味も」という願いももてるようになってきました。しかし,現実には,二者択一,つまり,雇用は保障されるが過重労働もある正規雇用か,労働時間は短いが生活と将来に不安も抱える非正規雇用か,を選択せざるをえないように見えます。

このように社会の可能性と現実が乖離しているため,さまざまな問題が出てきています。例えば,社会は旧来あった「卒業→就職→結婚→子どもをもつ」というキャリア・ルートの規範は残したまま,実態としてはそのルートを破壊しています。しかも,社会は解決の方向を示していません。若い人たちが個人で解決しなければならないため,さまざまな困難を抱えています。

例えば,若い人たちは「何が何でも正社員にならないといけない」「就職活動で失敗したら自分の人生はない」などと思い込み,必要以上にプレッシャーを感じて就職活動から降りてしまうことがあります。反対に,「有名企業に就職したらそれでよい」として自分の働きかたを十分に考えられなくなり,希望がかなっても自分に合わないことから辞めざるをえないこともあります。また,傷つきを抱える人は,自分の苦手な場面(例えば対人関係)から回避することで問題を解決しようとして,ますます自分を追い込んで身動きができないことがあります(5)

これらは若い人の個人的な弱さによるもののように見えるかもしれませんが,すでに述べたように,そもそも社会に矛盾にあるにもかかわらず,その解決を個人に委ねているため,個人の特徴が前面に出てしまうのです。


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