社会心理学の学際性とは(1)

木下:

学問分野により業績として認められる刊行物の種類が大きく異なりますね。一般的にいうと自然科学では学術雑誌が主要な発表場所ですが,人文・社会科学では単行本が主戦場です。日本政治学会にも雑誌はありますが,それは先ほど話した『年報政治学』だけではないですか。その点,心理学は本も雑誌もたくさんあるという意味で,自然科学と人文・社会科学の中間的存在です。

また本といってもいろいろあり,語学では辞書や翻訳書も大きな業績になりますが,それ以外の分野ではウエイトが低いですね。語学でも雑誌はありますが,学会の機関誌的なものは少なく,多くは「同人誌」形式のものです。同人誌の類は語学以外の分野ではあまり評価されませんが,その背後には個別学問分野の特殊事情があるのでしょう。そういえば,法学系の雑誌には三浦さんの言われるような学部紀要の形をとっているものが多いけれど,これも文学部や人間科学系学部の紀要と違ってその分野では権威が高く,教授の許可がないと投稿もできないのが普通です。学際研究をするにはこうした「発表場所の確保」という事情も考慮する必要があるのです。

さらにいえば論文の評価に関しても,審査付きでなくても認めるとか認めないとか,外国語で書いていなければいけないとかいろいろあります。オーサーの順番を数学や物理学のようにアルファベット順にしているところと主著者を前に出すところがありますね。

三浦:

経済学もアルファベット順なんですよ。ファーストオーサーだからといって,何もないということのようです。

(→続く:近日公開予定)

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文献・注

(1) 木下冨雄 (1995).「学問にとって総合性とはなにか」広島大学総合科学部創立20周年記念シンポジウム実行委員会編『21世紀へのパラダイムシフト――転換期の大学と学問』広島大学総合科学部,pp. 10-25.
木下冨雄 (2005).「学際研究の楽しみ」『心理学ワールド』31,巻頭言
木下冨雄 (2006).「学際研究の楽しみ」『学際』17,巻頭言

(2) 木下冨雄 (1958).「混み方の研究――電車内における座席占有行動の分析」『日本心理学会第22回大会発表論文集』pp. 312-313.

(3) 三宅一郎・木下冨雄・間場寿一 (1967).『異なるレベルの選挙における投票行動の研究』創文社


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