社会心理学の学際性とは(1)

初期の学際研究

――いろいろな学際研究をされてきたなかで,最初に関わられたのはどういったご研究だったのですか。

木下:

学際的な最初の研究は日本心理学会で1958年に発表しました。まだ日本社会心理学会が存在しなかった頃です(2)

これは京都市の交通局の委託によるもので,無人の状態の市電に客が乗り込んで座席に座るとき,時間経過とともにどのような分布になるかを1万人を超す実測データと数理モデルで解析したものです。研究テーマ的には「群衆流動のミクロ・マクロ問題」ということになりますが,応用的には「電車の乗降口をどこに設定したら最も混み方が平均化し輸送効率が高まるか」ということになります。

ただこの発表をしたら,ある大先生が来られて「キミ,電車の研究をして何になるのかネ」と咎められました。私が「これは電車の研究ではなく,電車という構造物の中にヒトが進入したときどのような行動を示すかという研究です」と答えたら捨て台詞を残して帰られました。苦い思い出です。

一方,学際研究に関して最初に刊行した書籍は,政治学者の三宅一郎君と社会学者の間場寿一君,それに社会心理学者の私でまとめた『異なるレベルの選挙における投票行動の研究』(3)です。ただこの本を刊行する前に,政治学会の学会誌『年報政治学』に共同執筆したり,京都大学の法学部の紀要『法学論叢』に十何回か連載しました。心理学者は普通は法学部の雑誌に論文を載せられないのですが,三宅君のおかげで可能になったのです。

三浦:

いまちょうど木下先生の『異なるレベルの選挙における投票行動の研究』を引用した論文を書いているところですが,政治学のものは『國家學會雜誌』とか『社會科學研究』とか,字が難しい東京大学の紀要風のものがたくさんありますよね。

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